第101話 夢幻/レダと白鳥〈ギュスターヴ・モローに捧ぐ〉 を語る

〈ギュスターヴ・モロー/レダと白鳥〉

夢幻/レダと白鳥 1986年発表。

美と幻想を描いたギュスターヴ・モローと、“シンフォニア・デッラ・ルーナ”林 克彦という二人の巨匠が時を越えて夢の融合を果たした音楽史上最高峰の名作!

この世に現れた数々の美しい音楽。それはこの作品が生まれるまでの序章であった。

この「レダと白鳥」で美しい音楽の歴史は極みへとたどり着いた。

ノヴェラの西田竜一、笹井りゅうじ、アウター・リミッツの川口貴、ミスター・シリウスの宮武和広、ページェントの中嶋一晃という超豪華メンバーをゲストに迎えた作品でもあり、まさに至高の一枚!

第一章 〈レダと白鳥〉

(ギュスターヴ・モローに捧ぐ)

哀しげなメロトロンの音色が徐々に湧き上がり、そして中村隆士氏の美しい歌声が響き渡る。

~モローの幻想に~

静寂とピアノ…

ギュスターヴ・モローの幻想と怪奇をテーマに、耽美な情景が描き出されてゆく。

~ヴェネチア模様~

~孔雀の羽~

浮かび上がる映像…。

あまりにも美しい中村 隆士氏の性を越えた歌声。それは他に類を見ない。そしてコード進行とメロディーは幻想と怪奇を見事に表情している。

哀しげな低音のストリングスは愛の蠢きを感じさせ、突如絶頂を迎える。

そして愛は歓びに!

美しいブラスの音色は愛の歓びを高らかに歌い、苦悩や恐怖をも内包する。

やがて嵐の如く運命は襲い掛かる!スリリングな展開とコード進行に心は引き裂かれて行く!そして様々なキーボードは幾多の場面を描き出す!

やがて静けさを取り戻し、Mr. シリウスのアコースティック・ギターが幻想的和音を散りばめる…。

~貴方は白鳥の~

中村 隆士氏の歌声は、霧の湖に漂うように美しく響きわたる。神話の中にいるようだ。

そしてレダと白鳥の愛は激情を迎え、やがて静寂…

~愛の泉~

美しいアコースティック・ギターとメロトロン・フルート に二人の魂は変化し、愛の霊泉で漂いつづける…。

〈夢幻〉

林 克彦 : Key.

中村 隆士 : Vo.

西田 竜一 :Dr.

笹井 りゅうじ :Ba.

宮武 和広 :Ac. G

次回、〈薔薇〉につづく。

Mugen / Leda et le cygne を語る。

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トリスタン

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第100話 ミスター・シリウス/バレン・ドリーム を語る

ミスター・シリウス/バレン・ドリーム 1987年発表。

ミスター・シリウスこと宮武和広氏が作り上げた日本のプログレの頂点に位置する奇跡のアルバム!

美しいストリングスの音色、フルート、12弦ギター、アコーディオン等、数々の楽器を操り自らの世界を描き出した「バレン・ドリーム」。

一人の男がプログレに命をかけた。

努力に努力を重ねた。

このアルバムは彼の命の結晶。

生きた証。

それはまさに神の領域に入り込んだ作品である。

人は神にもなれるのか。

〈Barren Dream〉

1)All The Fallen People 〈峡谷倶楽部〉

Overture

力強いティンパニが打ち鳴らされ、メロトロンが湧き上がる!そしてフルートは運命的な美を奏でる!衝撃的なオープニングだ!

そして不穏なストリングスが地を這う。すると突如途切れ、ストリングスは安らぎと悲しみの旋律に変わる。鳥たちの声も聞こえる。

Madrigal

6/8でピアノがアルペジオを奏で、笛の音が舞う。

そしてスキャットと共に永井博子が舞台に登場。

~Be my soldier, please~

その歌唱、旋律、和音進行、そしてその周りを飛び交う妖精たちの様なコーラス、もはや現実ではない、夢と幻想の世界。

美の極限に達している!

そしてフルートは思考を越えた異次元の旋律で舞い、境界を越えてゆく…

~Play me happy blues~

永井博子の歌唱は、見たことのない幻想風景を描き、私をいざなう。

~彼方へ~

しかし、この夢は朽ちてゆく…

変則的リズムにスキャット、次に現れる世界は?

Rhapsody

明るく希望に満ちた躍動的な歌が高らかに歌われ、美しいリード・ギターが天を舞う!

All must be done !

クラシック・ギターの音色が静寂を呼び、日没の様なストリングスが地平を漂う。辺りは暗くさみしい。

Fantasy

再び6/8のピアノが流れ、フルートと妖精コーラスが舞う。そしてスティーヴ・ハケット風のシンセ・ギターが魔法の翼を広げ羽ばたく!

You’ve been~

コーラスが別れの時を告げる。

そして安息のストリングスが、穏やかに終幕を奏でる。

あまりにも美しい音楽の物語…。

「ミスター・シリウス」の神にも等しい創造性が今、世界に向かって解き放たれたのです。

2)Sweet Revenge

複雑なリズムにフルートが舞うスリリングな名曲!

3)Step Into Easter

フランスのモンマルトルにいざなう名曲。フルート、アコーディオン、ナイロン弦ギターが美しい。そして永井博子のヴォーカルも絶品!

~その時聞こえる~

4)Intermezzo 〈間奏曲〉

シングル「Eternal Jealousy」のB面に収録されていた曲のリミックス版。

あまりにも美しいピアノ、ストリングス、フルート、そして悲しいメロディー。そして永井博子の圧倒的ヴォーカル。

~その時まで…さようなら~

悲劇的なストリングスがこの名曲を支配する。

5)Eternal Jealousy

小川文明の美しいピアノがたゆたう…。夢のようだ。

そしてストリングスが彼方から湧き出る。

複雑なリズムと伸びやかなリード・ギターが舞う!凄いアンサンブルだ!

フルート、ピアノも躍動する!

哀愁のストリングスに導かれ、永井博子のヴォーカルが美しい姿を現す。

~Love from the ocean~

再び複雑なバンド・アンサンブル、そして永井博子は力強く歌う!

本当に凄い曲だ!

6)Lagrima

12弦ギターとフルートが美しいアコースティックな名曲。永井さんの声はシルクの様に美しい。

~もう誰も気づかない~

7)Barren Dream 〈不毛の夢〉

悲劇的ストリングスが聞こえて来る。そして続くのは優雅なピアノ。やさしくバンドが加わりフルートが歌う。

そして力強さと共に、ギターが美しいメロディーを奏でる。

そしてクラシック・ギターが後を引き継ぐと、オルガンがやさしく流れる。

再びギターとバンドが力強いアンサンブル。

風の様なシンセサイザーがやがて不安を呼び、ピアノがたゆたう。

悲しみのストリングスが主題を導き、そしてピアノに乗せ、永井博子は歌う。

~夢は束の幻~

哀愁の旋律は、この世の悲しみの全てを集めたかのよう…

Barren Dream

このアルバムのテーマ、不毛の夢が描かれた名曲。本当に美しい…。

力強いバンド・アンサンブルが有終の美を飾る。

ピアノが最後の別れを奏でる。

現在、音楽の世界から離れ、大阪で家業の傘屋「心斎橋 みや竹」をインターネットを中心に経営する宮武氏。人間国宝と言える存在です。

まいど!

楽しいライヴをありがとうございました。

〈MR. SIRIUS〉

Mr. Sirius

flute, keyboads, mellotron, piano, electric-g, acoustic-g, 12-strings, ex-3, classical-g, accordion, hammond, bass

永井 博子

vocal, chours, Grand piano

藤岡 千尋

drums, tambourine

〈ゲスト〉

大谷 レイブン :lead&solo-g

小川 文明 :Grand piano

清水 義央 :lead-g

高山 博 :flute bridge compose

〈イラストレーション〉

須藤 彩

〈Executive Producer〉

Numero Ueno

そして小川文明さんのご冥福をお祈り致します。

MR. SIRIUS / Barren Dream を語る。

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第 98 話 ラウドネス/撃剣霊化 の名曲 夢・Fantasy を語る

ラウドネス/ディスイリュージョン〈撃剣霊化 〉 1989年発表。

ラウドネスは、このアルバム発表を期にヨーロッパに進出した。その模様はビデオ作品「ユーロバウンズ」で見る事が出来る。

非常にワクワクした。俺達の「ラウドネス」が、ヨーロッパのファンを興奮のるつぼに叩き込んでいる!誇らしかった!

今考えて見てもあれは当然の結果だ。ラウドネスの音楽のクオリティーはとてつもなく高い!ハンパないレベルだ。

日本凱旋コンサートの模様が当時、FMでオン・エアされた。二井原がMCでヨーロッパ・ツアーの事を話していた。

「牛とかね、羊とかね、もうこんなとこに人なんか来るのかって所にね、目イッパイ入るんでね!」「ウオー!」(歓声)

「俺達はアイツ達の事を、」「ウオー!」(歓声)

「ヨーロピアン・ヘヴィ・メタルはゾンビだぜ!アイツ達は!」「ウオー!」(歓声、笑い)

ラウドネスの勢いは凄まじかった。このアルバムはまさに当時のメタル・キッズの教科書だった。「Crazy Doctor」「Esper」「Exploder」「夢・Fantasy」「Milky Way」「アレスの嘆き」等、代表曲の他、プログレッシヴでスリリングなアレンジの「Butterfly」「Revelation」等、踊り出さずにはいられないノリの「Satisfaction Guaranteed」等、名曲揃いである!

誰もがこぞってコピーした!練習した!本当に夢があった!そしてさらにアメリカ進出でもうお祭り騒ぎである!凄い時代だった!

<夢・Fantasy>

16分音符の連打で、強烈に始まる!

速いメロディーのリフで、疾走する!

~すでに街は~

再び速いメロディーのリフ!

~ケバい女~

キャッチーなBメロから哀愁のサビへ、

~灼熱の夢売り女~

このサビのメロディーは本当に美しい!二井原の歌唱力あってこそとも言える!

2コーラス終わって、ブレイクしてギター・ソロ!2音ずつ弾いて下降するよく考えられたフレーズ!さすが!

そして勢いよく疾走して速弾きをかます!ディミニッシュ・スケールも出てくる!(これは前曲「Exploder」に関連付けしたものらしい)

そしてB7から半音ずつ上がって、クライマックスのアルペジオ・フレーズが登場!これは感動的!そして2弦、1弦の反復フレーズと解放弦を使ったフレーズ!再びアルペジオ・フレーズ!そしてライト・ハンド!この構成力は本当に素晴らしい!ドラマがある!

高崎 晃のギターの何が素晴らしいかと言えば、素晴らしいソロ、リフを作る才能とテクニックと並び、ピッキングやフィンガリングやビブラートに込められた情熱、エネルギー、エモーション、フィーリング等の素晴らしさである!

その音には高崎 晃にしか出せない表情やオーラが滲み出ている!格がある!偉大なギタリスト達には皆これがある!

そしてジャジャジャジャジャ、ヘイ!ジャジャジャジャジャ、ヘイ!でトドメを刺す!カッコ良すぎである!

~夢・ファンタジー~

樋口さんの迫力のフィルインが轟く!そしてサビ!

~灼熱の夢売り女~

感動のサビが2回繰り返される!素晴らしい!そして速いメロディーのリフ、最後は16分音符の連打に乗せ、二井原がキメる!

ウオー~~~オー~~~~~!!(ハイE !)

いやカッコいい!歴史的名曲!

そして樋口 宗孝さんのご冥福をお祈り致します。

〈LOUDNESS〉

高崎 晃:Guitars

二井原 実:Vocals

山下 昌良:Bass

樋口 宗孝:Drums

LOUDNESS / Disillusion の名曲 Dream Fantasy を語る。

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第 97 話 クエラ・ヴェッキア・ロカンダ/歓喜の時 を語る

クエラ・ヴェッキア・ロカンダ/歓喜の時 1974年発表。

イタリアン・プログレッシヴ・ロックの最高峰の名盤である!このアルバムが、エジソンより1987年頃再発された時は事件であった!

キングのユーロピアン・ロック・コレクションによってかなりのアルバムが再発されたが、このRCAレーベルの作品はまだ再発されておらず、プレミアが付いていた。

そして2003年のBMGの再発による、デジタル・リマスター、紙ジャケット化も事件であった!

エジソンから再発された時は邦題が「歓びの瞬間」だったが、今回は「歓喜の時」になっている。

ストリングスを導入したクラシカル・シンフォニック・ロックの頂点として、ニュー・トロルスの「コンチェルト・グロッソ」とオザンナの「ミラノ・カリブロ9」、そして同じくRCAのロヴェッシオ・デッラ・メダーリャの「汚染された世界」と共に知られている!

とにかく美しく、格調高い作品である!また、ジャズ・ロックのテイストもあり、奥深い味わいがある。

〈Il Tempo Della Gioia〉

lato A

1)ドリア・パンフィリの別邸/Villa Doria Pamphili

美しいピアノが華麗に舞う。アコースティック・ギターも寄り添う。

そして哀愁のヴァイオリンが咽び鳴く。本当に美しいメロディーだ。そしてジョルジオ・ジョルジは端正な声で歌い出す。

~Scender sulla terra~

叙情的で美しいメロディーだ。そしてテノールのような力強さもある。

そして荘厳にストリングスが鳴り響き、メインテーマを2度奏でる!シンプルだが美しいメロディーで素晴らしい!ドラムも迫力があって効果的だ!

~Dolce l’armonia~

とにかく素晴らしい歌声で、フランチェスコ・ディ・ジャコモや、ニコ・ディ・パーロに並ぶ魅力がある。

そして再び荘厳にストリングスが鳴り響き、メインテーマを3度奏でる!素晴らしい!感動的だ!イタリアの音楽を聞く喜び!まさに「歓喜の時」!

最後にピアノが華麗な舞いを見せる。本当に美しいピアノだ。

しかし何と芸術的で美しい曲だろうか。イタリアン・ロック恐るべし。

★YouTube/Villa Doria Pamphiliはこちら

2)様式美的/A Forma Di…

バロックの美しいメロディー。ストリングス、ピアノ、フルート、チェンバロ、コーラスが次々に重なり、徐々に荘厳に盛り上がって行く!

徹底的な伝統美がここにある!

3)歓喜の時/Il Tempo Della Gioia

ストリングスが哀愁のメロディーを奏で、繊細なヴォーカルが歌う。しかしイタリア人は美しい声を持っている。

そしてジャズのスリリングなリズムに展開してジョルジオの力強い歌声がこだまする!何とも緊迫感のあるメロディーだ。

ジャジーなピアノ、ギターのソロが続くと突如コーラスが乱入!

再びジャジーなソロ・パートが続く。コントラバスのソロもいい味を出している!

再びジョルジオの力強い歌声。クラシックとジャズが正面からぶつかり合った凄い曲だ!

lato B

4)或る日、或る友/Un Giorno, Un Amico

華麗なピアノ、ヴァイオリンが無限の翼を広げて、異次元の空を突き抜ける!何という崇高な演奏なのだ!

そしてスリリングなジャズ・ロックが猛威をふるう!しかし凄いヴァイオリンだ!これ程の音楽をプレイする才能に畏怖を感じる。

少し引いたアンサンブルの後、ジョルジオ・ジョルジのヴォーカルが登場。力強く堂々と歌い上げる!そのドラマチックで哀愁に満ちた世界にストリングスが色を添える。

再びスリリングなジャズ・アンサンブル。サックスが舞う!

ため息がでる素晴らしさ!

5)夜の出来事/E’ Accaduto Una Notte

コーラスが夜を導き、ギター、キーボードが忍び寄る。そこにフルートが加わるとPFMを思い出す。

暗く不安なメロディーをジョルジオは歌う。このメロディー感覚はクエラ・ヴェッキア・ロカンダの特徴でもある。

この不安なメロディーをクラシカル・アンサンブルが高らかに奏でる。そしてシンセ・ストリングスが湧き上がり、爆破する!

自らの果てにたどり着いてしまったという事なのか?!

名盤の宿命、狂気はやはり異次元。

数年前、数多くのイタリアン・ロック・バンドが来日して、夢を見せてくれた。しかしクエラ・ヴェッキア・ロカンダの来日は、未だに実現していない。やはり無理なのだろうか…。

〈QUELLA VECCHIA LOCANDA 〉

Cloudio Filice:Violin

Giorgio Giorgi:Vocals&Flt

Massimo Giorgi:Bass

Massimo Roselli:Keyboads

Patrick Traina:Drums

Raimond Cocco:Guitars

QUELLA VECCHIA LOCANDA / Il Tempo Della Gioia を語る。

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トリスタン

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第 96 話 ディープ・パープル/紫の肖像 を語る

ディープ・パープル/紫の肖像 1973年発表。

黄金時代の第2期ディープ・パープルの最後を飾るアルバム「紫の肖像」。

「ファイア・ボール」と並んで評価があまり高くないアルバムである。

「イン・ロック」「マシン・ヘッド」「ライヴ・イン・ジャパン」というブリティッシュ・ハード・ロックの頂点に君臨するアルバムの後ではあまりにも分が悪いというのはある。

このアルバムは「マシン・ヘッド」と比べて少しレイドバックした印象で「ブリティッシュ・ロック・ファン」向けのアルバムのようにも聞こえる。

「ブリティッシュ・ロック」と言っても、キング・クリムゾン、ピンク・フロイド、イエス、ジェネシス等ではなく、例えばスプリング、T2、ニドロローグ、ベガーズ・オペラ、ヒューマン・ビースト、クレシダ、グレイシャス、ブラック・ウィドウ、リーフ・ハウンド、アフィニティー、ザカリアス、インディアン・サマー等である。

この「紫の肖像」は緊張感溢れる「ディープ・パープル」ではなく「ブリティッシュ・ロック」としての味わいを押し出した仕上がりのようだと考えられる。

同様の事が、「マシン・ヘッド」収録曲、「Maybe I’m Leo」「Never Before」にも言える。

以前はこの2曲には目もくれなかった。しかし聞き方を変えると、やはり名曲である事が解った。しかし歴史的名曲の他の収録曲が相手では、確かにあまりにも分が悪い。

という風に今まで思っていましたが、とんでもない間違いでした。

「Smooth Dancer」の圧倒的パワーとエネルギーはどうでしょうか!そして次の「Rat Bat Blue」のツェッペリンに迫るブルースリフ主体の強力なナンバーは!

もしこの2曲がアルバムのオープニングに据えられていたとしたら!?

私は間違いなく「マシン・ヘッド」に劣らぬ名盤として語られていたと思います!

「Woman From Tokyo」なんぞB1に入れとけば良いのです!

では何故パープルはこのような曲順でアルバムを発表したのでしょうか?

「マシン・ヘッド」とは違う「ブリティッシュ・ロック」を目指したのでしょうか?これはこれでもちろん素晴らしいアルバムなので、結局どちらでも良いです。

<紫の肖像/Who Do We Think We Are>

side A

1)Woman From Tokyo

イアン・ペイスのハイハット、バスドラムからリッチーのギターリフへと繋がり、曲は軽快に爽やかに始まる。

明らかにパープルは明るく新しい音楽へと進んだ感じがします。にしてはイアン・ギランがガナリ過ぎだと思います。

サビはリッチーのリフそのままのメロディーをギランは歌っていると、ぼやいていました。

中間部の「So far away from the garden we love~」の部分の優雅な雰囲気が素晴らしい。

結局パープルはこの曲をオープニングに持って来て新しい音楽に進む事を選んだようです。

2)Mary Long

この曲がまた良い雰囲気なんですよね!イントロのスライドギターからして最高です!

イアンのヴォーカルがのびのびと快活なメロディーを歌っています!

そしてリッチーのギターソロも弾けるようにノリノリでプレイしています!

やはりパープルは第二の「マシン・ヘッド」を発表する気はなかったようです。

3)Super Trouper

イントロはカッコいいユニゾンから始まり、イアン・ギランのハードな歌声が続く!

伝統的なパープル・サウンドのようではありますが、爽やか(?)なコーラスが配されていて、やはり新しい道に進んでいる。

リッチーのギターソロがまた絶妙なプレイで思わず引き込まれてしまいます!そのバックのアレンジも凄い。

4)Smooth Dancer

そして問題のこの曲!イアン・ギランのハード・ドライビングな歌声!そのバックの凝ったアレンジ!とにかく本来のパープルのエネルギーに満ちた素晴らしい曲です!

しかし今頃こんな曲が出て来ても、既に聴き手は昼寝をしていてそんな事に気付かない。

間奏のジョン・ロードの圧倒的なオルガン・ソロのカッコ良さはどうでしょう!しかしリッチーのギターソロがありませんね。

これ程の名曲を後回しにしてまでパープルは新しい道に進んだのです。(しつこい)

side B

5)Rat Bat Blue

そしてこちらも問題の名曲です!ツェッペリン風のブルースリフが切れが良くてとにかくカッコいい!ギランの歌声も最高です!

そして間奏はロードのオルガンとキーボードの華麗なソロが嵐の如く舞う!またリッチーのギターソロがありませんね。

ああ、何故こんな素晴らしい曲が歴史に埋もれているのだ!やはりこの2曲がオープニングで輝いていて欲しかった!

6)Place In Line

渋いブルーズ・ナンバー。リッチーのギターはもう最高!続けてオルガンも最高!

7)Our Lady

イアンの素晴らしいヴォーカルが堪能出来るおおらかな曲。コーラスも入っている。

どっち付かずの事ばかり言いましたが、実ははじめから答えはアルバムタイトルに表されてていたのです。

「Who We Think We Are」

パープル本人達も自分が何者なのか分からなくなっていたのでした。

でもどちらに転んでも素晴らしい作品だと思います。

私はこのアルバムの完全再現ライヴを見たい。絶対やらないな。

そしてジョン・ロードのご冥福をお祈り致します。

〈DEEP PURPLE〉

Ritchie Blackmore:Guitars

Ian Gillan:Vocals

Jon Lord:Keyboads

Ian Paice:Drums

Roger Glover:Bass

DEEP PURPLE / Who Do We Think We Are を語る。

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第 93 話 ページェント の名曲 ヴェクサシオン を語る

ページェント/インディーズ・コレクション

大正ロマンティシズムとユーロピアン幻想が見事に溶け合ったサウンドは私の心を強く捉えた!

ページェントの初のCDはこれでした。非常に良いベスト・アルバムです。

1)螺鈿幻想

2)ヴェクサシオン

3)人形地獄

4)仮面の笑顔

5)奈落の舞踏会

6)蜘蛛の館

7)木霊

8)エピローグ

「螺鈿幻想」の代表曲と「奈落の舞踏会」の代表曲、そして未発表曲の“蜘蛛の館”で構成されています。

“ヴェクサシオン”はもちろん永井さんのヴォーカルが素晴らしいニューヴァージョンです。

オリジナルは宮武さんの言うようにミス・プロデュースだったので、このニューヴァージョンの収録はありがたいです。

それでは「ヴェクサシオン」をお届けしましょう。

<ヴェクサシオン>

美しい12弦ギターのアルペジオが流れる。天上界のような美しさ。そして永井さんが歌い出す。

~生まれた時からずっと~

~鏡を重ねた~

宮武氏の美しいフルートがひらひらと舞う

~貴方は右を~

~やがて天使に~

悲劇的な詩は美しい旋律に重なり、永井さんの歌声に悲しみを宿す。

~白い部屋の中で~

無邪気な笑い声が悲しみを誘う。

~誰がいけないの?~

~ヴェクサシオン~

宮武氏の美しいフルートは純粋さを描く。純粋さゆえに悲しい。

軽快に変拍子でリズムが刻まれる。そしてシンセ・ソロはあくまで明るさを表現する。そしてAメロをギター・ハーモニーが奏でる。

物語のページはめくられる。

そして最終章のメロディー。

~鉛色の壁の中~

~淋しがり屋のヴェクサシオン~

全ての魂を浄化するような旋律。心の奥から溢れる聖なる感情。人間界と天上界を繋ぐのは儚き夢。

そしてシンセ・ブラスは高らかに鳴り響き、ギターが涙ぐむ。可哀想な子たちのために。

そしてフルートはひらひらと舞う…

本当に悲しくも美しい曲です、宮武さん。

〈ページェント〉

永井博子 (Vocal, Keyboads)

中嶋一晃 (Guitars)

山田和彦 (Bass)

引頭英明 (Drums)

長嶋伸行 (Bass on 1,2,7,8)

宮武和広 (Flute on 1,2,8)

PAGEANT の名曲 ヴェクサシオン を語る。

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第 92 話 ルシファー を語る

ルシファー/ルシファー Ⅰ 2015年発表。

THE OATHの妖艶な女性ヴォーカル、ヨハナ・サドニスと元カテドラルのギタリスト、ギャリー・ジェニングスが組んだニュー・バンド、「ルシファー」。

オカルトなドゥーム・ロックにヨハナの妖艶な歌声が乗る事により、独特の魅惑的なサウンドが生まれた!

来日公演も実現した!

ルシファー/ルシファー Ⅱ 2018年発表。

ギャリー・ジェニングスが脱退して、ザ・ヘラコプターズ、インペリアル・ステイト・エレクトロニックのニッケ・アンダーソンが加入した、新生ルシファーの2ndアルバム!

前作ではオカルト・ドゥーム・ロックだったが、このアルバムでは70年代の伝統的なハード・ロックになっている!

曲作りのパートナーを失ったヨハナのピンチをニッケが救った様だ。

「Dreamer」のMVは70年代風で、ヨハナは白馬に股がり、非常に美しい。

★YouTube「Dreamer」はこちら

そして何とスコーピオンズの「Evening Wind」のカヴァーが収録されている。

そしてついに待望の再来日公演が実現した!

6月10日渋谷クワトロ!生で見るルシファーは信じられない程素晴らしかった!ヨハナの美しい姿、そして今更ながら白人が演奏するロックのカッコ良さを思い知った!

開演前にたくさんあったTシャツが、終演後あっと言う間に売り切れた!売場の人が驚いていた!

やはり来日して生のライヴを見せる事がいかに重要かを実感した!あの素晴らしさは生でないと伝わらない!私は一生ルシファーを支持する!

ルシファー/ルシファー Ⅲ 2020年発表。

そして来日公演の感動が醒めない中、早くもニュー・アルバムが登場!これは驚いた!凄い勢いだ!

前作に続き、良質の70年代ハード・ロックが堪能出来る!

そして「Midnight Phantom」「Leather Demon」のMVがまた素晴らしい!

そして何とヨハナの名前が

Johana Platow Andersson

となっていた!これはもしかしたら…

そうか、ニッケなら仕方ないか。祝福します!

ルシファーのこれからに期待します!

〈LUCIFER 〉

Johana Platow Andersson:Vocals

Nicke Platow Andersson:Drums

Linus Bjorklund:Guitars

Martin Nordin:Guitars

LUCIFER を語る。

ルシファー / ルシファー III [CD]

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お越し頂き、ありがとうございました。また お逢い致しましょう。

トリスタン

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