第223話 ロイヤル・ハント/ムーヴィング・ターゲット を語る

ロイヤル・ハント/ムーヴィング・ターゲット 1995年 発表。

新ヴォーカリストにDCクーパーを迎え、「ロイヤル・ハント」は理想の音楽像を完成させた!ここから黄金の伝説は始まった!

今もなお精力的に活動を続ける「ロイヤル・ハント」。

一時期はアンドレ・アンダーセンが音楽市場に希望を見出だせなくて、「ロイヤル・ハント」の終焉をほのめかせたが、こうして活動を続けてくれて嬉しい限りです。

そしてこの「ムーヴィング・ターゲット」。

DCクーパーの加入によって「ロイヤル・ハント」の音楽のクオリティーは超一級品となった!メンバーチェンジが良い結果となった素晴らしい例です!

DCクーパーはアンドレ・アンダーセンの書くクラシカルで芸術的なソングライティングを100%活かしきる稀代のヴォーカリストだと思います!

DCの魅力はあの高音域もそうですが、やはりミドルレンジの豊かで説得力のある声質にあると思います。

ジューダス・プリーストのオーディションではティム・オーウェンズ負けましたが、ミドルレンジの声質の魅力ではDCのが上だと思います。( もちろん私はティムも好きです)

ライブ・アルバム「ロイヤル・ハント1996~ライヴ・イン・ジャパン~」では過去の作品がDCの歌声で甦り、珠玉の作品集となりました。こちらも必聴盤です!

改めて聴いてみても現在まで一貫した作曲技法を貫くアンドレの才能は本当に凄いと思います。

そしてギタリストはやはりオリジナルのJacobの方が「ロイヤル・ハント」らしい独自の味を出していたと思います。

〈MOVING TARGET〉

1)Last Goodbye

クラシカルなキーボードのフレーズが聞こえて来る。そしてリズムがシリアスに加わる。ただならぬ物語の幕開けだ。

アップテンポになり華麗さは更に増して行く!ただネオクラシカルなロックをプレイするのとは訳が違う!この緻密なアレンジはアンドレ・アンダーセンならではのクオリティーだ!

Crime is done !

DCクーパー登場!豊かなミドルレンジの声は曲に圧倒的な説得力を持たせる!ハード・ロックはハイトーンで歌ってナンボだという神話があるが(もちろん私はハイトーン大好き)、ミドルレンジでも成立する事をDCは証明した。

その歌のバックのキーボードがまたいい。

テンポがスローになる部分も華麗だ!

Last ! Last Goodbye !

女性コーラスがサビをキメる!これはもうお家芸である!ロイヤル・ハントならではの味わいですね。

DCはハイトーンもキメるが、あくまでフレーズにトドメをさす!という使い方に押さえている。なんならハイトーンなしでも通用するくらいにDCのミドルは素晴らしい。

間奏のアレンジも見事にドラマチック!ただソロを弾いて終わりなんていう適当なアレンジではない!完璧に作曲、構築されている!そして何とギター・ソロがない!

それはエンディングも同様!プログレとも呼ばれる所以である!まさに芸術ロック。

曲の終わりになにやらナレーションが語られる。

DCクーパーを迎えた記念すべき1曲目は大勝利である!

2)1348

炸裂音に続き、キーボードのフレーズが始まる。

Future’s comin’ from the past !

女性コーラス登場!これぞロイヤル・ハント!

そして劇的な展開。悲しげなコード進行が繰り返される。

fire’s risin’ off~

DCは内省的に悲しげなメロディーを歌う。低音域を活かした見事な歌唱である。

今、思い付いた!DCクーパーは「キング・クリムゾン」のヴォーカルとして通用するのではないか?!是非とも実現して欲しい!(する訳ないか。っていうか誰も考えないな。いや、それならエイジアもいけるかも。さすがに私の発想は非凡だ。)

強烈なヒット音がとどろき、変則的フレーズ、変則的リズムに繋がる。一体どんな規則に基づいたフレーズなのかさっぱりわからない!まさにプログレ!そしてロックらしいパートになだれ込む!そしてギター!キーボードのソロ!

キメはまた変則的フレーズ!クラシカルなキーボードが後に続く!

DCは音域を上げ、クライマックスへと突入する!この辺りの盛り上がりは本当に素晴らしい!

December ’48!

DCのハイトーンがこだまする!このドラマチックさはどうだ!

これも本当に名曲です!

3)Makin’ A Mess

壮大なクラシカル・フレーズに続き、6/8拍子のリズムで行進する!このメロディーもよく出来ている!

I was raised in a~

DCの歌うメロディーは民謡のような響きで心をとらえる。全体的にミドル~ハイの音域でテンションは高めだ。

歌の合いの手のように出てくるメロディーがまた効果的!本当に凝っている!

Never ever !

女性コーラス登場!明るく希望に満ちたメロディーでカッコいい!

ギター・ソロもフリーなソロではなくサビのテーマに基づいた完成されたメロディーです。

静かになりチェンバロ風のアルペジオをバックにDCは感動的な歌を聞かせてくれる。

サビは繰り返され、讃歌の如きメロディーは心に沁みわたる!ジャーマン・メタルとは違う方法論で作られたサウンドだ!

最後はクラシックのキメのようにバシっと終わる!カッコいい!

才能がほとばしる音楽です!

4)Far Away

阪神大震災をテーマに作られた曲だと聞きました。その心に感謝します。ロイヤル・ハントと日本は早くも絆を結んだ。

女性コーラスがあの独特のコード進行を歌う。そして泣きのギターが響き渡る!

In the misty morning~

DCの悲痛な歌声、そしてバックに流れるオルガン。鎮魂歌として心にせまる。この哀しさは次作の「Paradox」に通ずるモノがある。

Far away !

このフレーズは心をわしづかみにする!何と感動的なのだろうか!そして「Far away」という同じ歌詞で何種類もメロディー、コード進行のバリエーションがある。

ダークなバッキングの上にギターは不穏なメロディーを奏で、その後をクラシカルなキーボードが悲しげなメロディーで心を慰める。切実な思いが溢れる。

Far away !

DCの歌声は、あの悲劇に寄り添ってくれている!心は通じあっている!その証しを刻んでくれているのだ!

You are so far, so far away !

最後のこのフレーズの何と心にせまる事か!哀しみに同苦してくれている!

ロイヤル・ハントのバラードの歴史に君臨する名曲となった。

5)Step By Step

弾むようなリズムを持ち独特の雰囲気を放っている。ジャズっぽくもある。

DCの歌い方もそれっぽい。とても凝ったアレンジになっている。

Step by step !

女性コーラスも歯切れがよい!

ギターもブルージーに!

シリアスなアルバムの流れに変化をつける効果を持っている。

6)Autograph

プログレッシブなインスト。印象的なメロディーを聞かせるタイプではなく、スリリングなアンサンブルが特徴。

7)Stay Down

サビのキャッチーなメロディーがいきなり炸裂するイントロ!つかみは完璧です!

They have promised~

このアルバムで最もキャッチーな曲ではないでしょうか?歌い出しから完璧なメロディーです!途中に現れるコーラスも効果抜群です!そしてDCの声が素晴らしいと感じます!

Stay down ! Low down !

そして必殺定番のサビのコーラス!よくあるタイプのメロディーですが(ボン・ジョヴィの曲とか)、圧倒的な完成度なので問題なく最高です!コーラスに続くDCの歌いっぷりも本当に素晴らしいです!

ギター・ソロは的確なメロディーで聞かせてくれます。派手さはありませんが曲を活かした見事なプレイです。

再びの歌はハーモニーを伴った姿でさらにアップグレードしている!そしてDCはここぞとばかりにハイトーンをキメる!見事なアレンジです!

Stay down ! Low down !

最後のサビも見事!DCのパートがさらに盛り上がりを見せてクライマックスを飾る!

バックの音は消え、コーラスのみが繰り返され、消えてゆく。

歴史に残る名曲だと思いますが、その後この曲に何故か光が当たっていない気がします。

8)Give It Up

シリアスな雰囲気で始まるイントロ。

Give it up just~

明るさと陰を巧みに混ぜ合わせたメロディーと華麗なコーラス。とても高いレベルの作曲です。が、

Give it up !

このサビが残念です。何故ここでこんな適当なフレーズを持ってきたのか?それまでのクオリティーが高いだけにもったいない。

9)Time

悲しげなアルペジオ。全ての希望が失われたようだ。

Time, How long~

絶望的な空気の中、何を語るのだろうか。そしてバンドは力強くサウンドを叩きつけ、DCはハイトーンをぶっぱなす!劇的だ!

ロイヤル・ハントらしいコードが鳴り響き、バンドはアップテンポで走り出す!

I keep runnin’ ~

ヨーロッパの「Stormwind」っぽいメロディーに心は弾む!このあと出て来る歌詞もそれっぽい!

中間部の雄大な歌いっぷりも素晴らしい!

Time~

コーラスと共に大きく声を伸ばし、独特のコード進行が展開する様はまさにロイヤル・ハントならではの世界!他に並ぶモノは無し!バックに流れるクラシカル・フレーズも同様に素晴らしい!

ギター・ソロ~キーボード・ソロは派手に撒き散らさず的確に押さえる!

Time~

サビは繰り返され、DCのハイトーンがここぞとばかりに吹き荒れる!まさにクライマックス!

5分にも満たない曲でありながら、壮大な叙事詩を聴いている錯覚におちいる!何というドラマチックさでしょうか!

ラストはサビのコード進行が繰り返され、厳粛な雰囲気で消えてゆく。それは人類が直面する宿命を感じさせる。

アルバムの最後は恐るべき余韻を残してゆく。

DCクーパー参加の第1作目は素晴らしい傑作となり、来日公演を成功させた!

そしてロイヤル・ハントはあの「Paradox」への道を進む。

〈ROYAL HUNT〉

D.C. Cooper:Vocal

Andre Andersen:Keyboads

Jacob Kjaer:Guitar

Steen Mogensen:Bass

Kenneth Olsen:Drums

ROYAL HUNT / Moving Targetを語る。

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トリスタン

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