第216話 フェア・ウォーニング RAINMAKER/レインメーカー を語る

フェア・ウォーニング/RAINMAKER 1995年 発表。

突如ドイツから現れたメロディアス・ハードの新星「フェア・ウォーニング」!日本での成功に続き、待望の2ndアルバム登場!

あの伝説のバンド「ジーノ」を母体として誕生した新バンド「フェア・ウォーニング」

ジーノのベーシスト「ウレ・リトゲン」、マイケル・フレクシグの後任シンガー「トミー・ハート」を中心に結成され、日本で絶大な人気を誇る。

というより、フェア・ウォーニングの良さが分からない世界の方がおかしい。

1stアルバムは素晴らしいメロディー満載の作品であったが、この「RAINMAKER」では更に音楽の幅、深みが増し、成長がハッキリと伺える!

ギターのバッキング音は歪みを押さえ、ナチュラルなロックのテイストを滲ませ、他のバンドとの明確な差別化を図った。

この試みは素晴らしい効果を上げ、ロックの原初的エネルギーを体現し、ダイナミズムを感じさせる事となった!私はこのサウンドが好きだ!

音楽性に於いては「ジーノ」が持っていたオリエンタル・テイストの復活が嬉しい!

「Stars And The Moon」「Angel Of Dawn」にそれが感じられる。

そしてアルバム・ジャケットのイメージに繋がる「Desert Song」「Rain Song」の深みは本当に素晴らしい!70年代の精神性を吸収し、理想的に具現化している。

ただのメロディアス・ロックに収まらない大きな器、可能性をここでハッキリと示した。

そしてそれをサウンドで更に表したのが、ヘルゲ・エンゲルケのスカイギターの音色である!

1st、ライヴ・アルバムでは普通の音であったが、このアルバムでヘルゲ独自の音色が完成され、その素晴らしいプレイの魅力を圧倒的な高みへと導いた!

師匠の「ウリ・ジョン・ロート」に肉薄するクオリティーが私を喜ばせる!

このアルバムで「フェア・ウォーニング」はその真の姿を現したのである!

〈RAINMAKER〉

1)Stars And The Moon

神秘的なシンセが生命のうぶ声を上げる。天空と大地は互いの存在に共鳴する。

大地を揺るがし巨岩が打ち付けられる!

そして人類は太古の神に祈りを捧げ、歌い、舞を舞う!

You know I’ll run to you !

人々の心を歌声として具現化する司祭トミー・ハート。彼のミコトノリに合わせ、鼓は撃ち鳴らされる!

唱和の声はたなびき、儀式は宴の色に染まる。

You talk to the stars and the moon !

天空に月は満ち、星は輝く。

今宵は神々と人類、獣達、全てが生命を謳歌する!

天空の神器、スカイギターを奏でるはヘルゲ・エンゲルケ。その旋律には生命の意思が、その音色には悠久の理が秘められている。

いつ果てるとも知れぬ生命のいとなみ。

ただ人々は祷り、奉り、その理に従うのみ。

悠久の時の流れ

無限の空間

一瞬の煌めき

星々よ、月よ、私の声が聞こえますか

★YouTube/Stars and The Moonはこちら

2)One Way Up

ダイナミックなロックンロールが炸裂!こういう曲でこのギターの音は効果的だ!

Thunder ! Lightning !

マイナーのメロディーに変わり、ハード・ロックの魂が燃焼する!もはや制御不能!

アンディ・マレツェクの華麗なるギター・ソロが曲を決定的なレベルに昇華する!

Thunder ! Lightning !

更にキーは上がり、テンションは登り詰める!まさにOne way up !

フェア・ウォーニングの進撃は、既にこの2曲で決定的な勝利をもたらした!

3)Too Late For Love

Your face in the mirror !

哀愁のメロディーに導かれ、ブルース調で曲は進む。これも新しい表現だ。

Too late for love !

コーラスと共にスケールの大きなメロディーが歌われる。ウネリを上げ、心に飛び込んで来るようだ!

アンディ・マレツェクのメロディアスでブルース・フィーリングに溢れたプレイが突き刺さる!見事!

Too late for love !

更にキーを上げ、愛の危機は高まる!

フェア・ウォーニングの個性は揺るぎない。

4)The Heart Of Summer

清涼な風が吹く夏。暑さも和らぎ、暫しの休息を取ろう。

Blinking light on the rooftops~

明るさと愁いが混じり合い、なんとも言えない哀愁が漂う。心が触られる感じ。

The Heart of the summer

爽やかなひとときを貴方に。

5)Don’t Give Up

ゆったりとしたドラムとスライディングを使ったギターのアルペジオが印象的なイントロ。

So here you go again~

トミーの歌声がドラマチックに響く。サバスのヘッドレス・クロスに通ずる。

‘Cause no one can steal your dream !

フェア・ウォーニングから送られるメッセージはとても心に響く!嘘、偽りのない純粋な精神の発露である。

Don’t give up !

トミー・ハートの情熱的な歌声は、私達の命を揺り動かし、目覚めを促す力がある!

Keep your dreams !

この言葉を忘れない限り、人類はやっていけるハズだ!内に秘めた力を解放せよ!

ヘルゲのギターは明日への希望を乗せ、飛翔する!

Don’t give up !

★YouTube/Don’t Give Upはこちら

6)Lonely Room

優しい雰囲気のバラード。

ボン・ジョヴィやジャーニーからの影響を感じるフェア・ウォーニングだが、この曲を聴くと、そのどちらでもないオリジナリティを感じる。

1stアルバムには2曲の名バラードが収録されているが、この曲の持つ味わいは負けてないと思う。

言葉で説明する類いではないので、解説は短め。

7)Desert Song

アコースティック楽器によるメイン・リフが曲の精神を表している。

そしてバンドと共に、乾いたギターの音がそのリフを奏でる。目の前には荒涼とした砂漠が広がる。

Refugees – homeless and bare !

家を追われ、悲劇的な状況に置かれた人々。これは砂漠の歌として描かれているが、いつの時代、場所にも当てはまる問題である。

古くは旧約聖書の脱エジプト、現代では難民。

曲が放つ悲哀をトミーは語り部、吟遊詩人のように歌う。その瞳は明日を見据えている。

With the desert song !

フェア・ウォーニングは芸術の可能性を信じ、新たな扉を開く。音楽から放たれるリアリティーは圧倒的で、その映像、風景、温度、空気、風、匂いまでが伝わって来るようだ!何という表現力!

クライマックスでウナリを上げるオクターブ重ねのギターのメロディーの雄弁さ、そしてツイン・リードの緊迫感、ベース・ライン、怒りのドラムは圧倒的だ!

ロックを絵画や小説、映画のように高い次元の表現手段にする才能に、ただ打ちのめされるばかりである!

8)Pictures Of Love

ここら辺でひと息いれませんか?

あの恋を思い浮かべて見ましょう。

優しい時間は流れ、楽しかった事に想いを馳せましょう。

丁度いい曲があるんですよ。

聴いていって下さい。

★YouTube/Pictures Of Loveはこちら

9)Desolation Angels

アコースティック楽器の響きが異国情緒を醸し出す。

ダークなへヴィ・ブルースか。ブラス系の音が退廃的な匂いを放つ!

Lost in a dream !

荒涼とした世界を緊迫感のある歌声で語るトミー!この舞台は「Desert Song」よりも闇を感じる。

Desolation angel !

なんともギリギリの淵に立たされたようなヤバさに溢れている!

フェア・ウォーニングの音楽性の幅は我々の想像を越え、どんどん広がって行く事を予感させる。

10)Angel Of Dawn

復活したオリエンタル・テイスト。シルクロードをゆったりと進むキャラヴァンが、星空を仰ぎ見る、というイメージ。

Girl I’ve been lonely~

情感たっぷりのトミー。我々は稀代のヴォーカリストに出逢ったようだ。マイナーのメロディーが沁みる。

Angel of the dawn !

オリエンタルなメロディーは私達の心の奥深く、感情の揺りかごを揺らす。東洋の神秘、生命の故郷、大地の子守歌、暁の天使。

ツイン・リードは美しく東の空に舞う!心はとろけそうです。

行商人の隊列は駱駝と共に、今日もシルクロードを進む。(イメージ)

そしてジプシー達は恋を歌う。(イメージ)

11)Burning Heart

人気の高い正統派メロディアス・ハード。フェア・ウォーニングにはこの路線が求められるのは仕方ない。まさに真骨頂!

The wind of the west !

押さえた歌い方から、徐々に盛り上がる。ツボを押さえたソング・ライティングだ!メロディー も文句なし!

Burning heart !

サビにどういう歌詞がくるかが大事だが、これはもうど真ん中!絵に描いたような出来だ!

アンディ・マレツェクのギターが勝ち誇ったように勝利の舞を舞う!その華麗な技はまさに絶品!羽生君のスケートの様です。

Burning heart !

キーが上がってダメ押しの感動が襲う!

最後は負けじとヘルゲも舞う!

12)What Did You Find

最後を総括するのは哀愁のスローナンバー。

The morning light has~

バラード調の歌い出しは感動的。とても美しい。

バンドが入って雄大なリズムが曲をいだく。ここ迄フェア・ウォーニングと共に旅をして来たが、その様々な景色が浮かび感慨深くなる。エンディング・クレジットが流れて来る。

ヘルゲのギターの泣きも素晴らしい。天空を舞うとはこの事です。

コーラスとトミーのかけあいも効果的。

トミーの情熱的な叫びと共にフェードアウトする。

〈bonus〉

13)Get A Little Closer

さあ、ここからはアンコールだ!盛り上がろう!

ノリノリのロックンロール!

イカすぜ!

14)Rain Song

アメリカの広大な大地に雨は降る。(イメージ)

今日も人々はいとなみを続ける。人生のヒトコマに雨は降る。(イメージ)

都会の雨ではない。大地を潤す雨である。

フェア・ウォーニングの勝利は決定的である。日本に於いて。

〈FAIR WARNING〉

Tommy Heart:Lead Vocals

Helge Engelke:Guitars

Andy Malecek:Guitars

Ule W. Ritgen:Bass

C C Behrens: Drums

FAIR WARNING / RAINMAKER を語る。

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トリスタン

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