第212話 ザ・マイケル・シェンカー・グループ/限りなき戦い を語る

ザ・マイケル・シェンカー・グループ

「限りなき戦い」 1983年発表。

脱退したゲイリー・バーデンが復帰して作られた、「MSG」黄金時代の最後のオリジナル・アルバム!

怪物ヴォーカリスト「グラハム・ボネット」はアクシデントにより、あっという間に「MSG」から脱退してしまった!ロックの歴史の中でも指折りの悲劇のひとつと言える。

そしてゲイリー・バーデンは帰ってきた。伝説の「レディング・フェスティバル」のエピソードはあまりにも有名。寛大なゲイリーによって救われたのだ。

そして本作が作られた。マイケルの最盛期であり、円熟期とも言える見事な内容である。この頃のマイケルがどれ程素晴らしかったかはライヴ作品「Rock Will Never Die」を聴くことで更に明確に解る!

そして本作はオリジナル・ミックスに加え、USミックスなどという訳のわからないモノがある。これもマイケルがミュージック・ビジネスに利用されたひとつの例ではないかな。

しかしゲイリー…。ライヴに於いて高いキーで歌えない事はイヤという程、身をもって実感しているハズなのに、何故にこんなに高いキーの曲を作って声を振り絞る?!

自虐的なのか?「オレは歌える」という勘違いに気付かないのか?それが彼のやり方なのか?マイケルは助言しなかったのか?その事について質問したインタビューはあるのだろうか?

低~中高音域はマイケルの言う通り、いい声をしているのに。

アルバム・ジャケットは曰く付き…。

〈BUILT TO DESTROY〉

side A

1)Rock My Nights Away

キーボードのアンディ・ナイのソング・ライティングが見事!「MSG」の新たなる出発を感じさせる華がある!

アンディのキャッチーなキーボードのリフが頭を飾り、ギターをはじめ、バンドが入って来るのだが、コード進行がいい!Eメジャー・キーとGメジャー・キーが交互に入れ替わる仕組みで、いいアイデアだ。

She never wants to hide~

ゲイリー・バーデンが歌い始めると、他の何者でもない「MSG」のサウンドになる!そこはさすがである。メロディー・メイカーとしても重要だ。

Rock my nights away !

そしてギター・ソロの導入部。低音によるマイケルのギターのゆったりとしたメロディーが何とも心地よい。クライ・ベイビーが理想的に掛けられ、程よい倍音を含み絶妙な音色となっている!マイケルのギターの魅力の重要な部分だ。

メイン・ソロはオーソドックスなプレイながらも印象的でマイケルらしいソロが楽しめる!

もう1コーラス歌う。この曲はまあライヴでもいい感じで歌えている。

ラストのソロは、歌うようなプレイに時折スリリングなフレーズを加え、生き生きとしたマイケル節を聴かせてくれる。

とびきりの名曲!

マイケル・シェンカー・フェストでプレイされていないのが残念。

2)I’m Gonna Make You Mine

ジャジャッというリフがまた素晴らしい!これもアンディ・ナイのアイデアだろうか?ロック・ギタリストが考えそうもないリフだ。

The day that you came~

ゲイリー・バーデンは歌い始める…。

だからキーが高いのですよ!はっきり言って名曲なんですから、1音半ぐらい(カラオケで言うと3つ)下げてもっと上手く仕上げましょうよ。セルフ・プロデュースの弊害ですかね?

I want you !

サビでも徹底的にハイトーンで叫びまくるが、これはもう「阿鼻叫喚」の叫びに聞こえる!

容赦なく言いましたが、ファンはこれを味だと思って聴いています。これが愛すべきゲイリー・バーデンなのです。

ライヴではご存知デレク・セント・ホルムスが見事な歌声を披露してくれました。映像を見るとサビでゲイリーは一緒に歌っていますが音声はデレクのみですね。(涙)

3)The Dogs Of War

イントロ。8ビートが刻まれ、ギターは「Desert Song」を思わせるハーモニクスをならし、不穏な空気を醸し出す。

EメジャーとEmコードを交互に鳴らすコード進行も効果的で、その奥でギター・ソロがプレイされている。向こうの方で戦闘が行われている雰囲気が伝わる。

Nothing worth taking !

正統派マイナーのメロディーで、わりとスムーズに歌えている。この感じは「MSG」の王道で非常に魅力的!

The Heat is on !

意外性はないが、サビも正統派ハード・ロックの魅力に溢れている!ゲイリーとマイケルのケミストリーは健在だ。

アップ・テンポに乗り、中音域~低音域でギター・ソロをキメるマイケル!非常にカッコいいフレーズを繰り出す!

そしてブレイクを入れてギターが舞い、叫びを上げる!名曲「Cry For The Nations」にも共通する手法で鳥肌モノである!戦場で爆風、爆炎、爆煙が吹き荒れる光景が浮かぶ!

B面の「Red Sky」と並び正統派ハード・ロックを堪能出来る名曲!

4)Systems Failing

マイケルの枯れた音色のギターが、まるで映画のワン・シーンのように華麗に舞う。それはハーモニーを伴い夢見心地。

What can you do~

それに続くゲイリーの歌声も映画のように美しい。このまま美しい映画音楽にしても良かったのでは?「Never Trust A Stranger」みたいに。

Leaving it now !

リズムを伴いゲイリーは声を振り絞る!こうなりましたか…。

Systems failing~

このフレーズはわりと穏やかで心地よい。バックでうねるシンセがいい効果を出している。

Oh, feeling better now~

低音域でマイナーなメロディーを歌う。これはいい感じだ。1stにもこんな感じの曲があったような。

ギター・ソロ

下降する練習フレーズのようなギターが登場。その狙いは?続いて下から上昇するフレーズをシンセとユニゾンする!これは高揚感がある!カッコいい!そして芸術的!

続いてイントロのフレーズに準じたメロディーがオクターブでユニゾン。ソリッドなイメージ。

そして何と!キメは下降する練習フレーズがハーモニーを伴い、劇的にプレイされる!これは凄い構成だ!これが狙いだったのか!恐れ入りました!

先ほどのオクターブ・ユニゾンがゆったりと王者の凱旋のように舞う。

そして再び声を振り絞るゲイリー。

ラストはオクターブ・ユニゾンが変化しながら繰り返される。優雅なメロディーがベートーベンを思わせる。何故ベートーベンか?直感でそう感じました。

5)Captain Nemo

全ギタリスト必聴のインストゥルメンタル!「Into The Arena」と並んでマイケルの代表曲!

冒頭の解放弦を使ったスリリングなフレーズは画期的だった!誰もが挑戦した!本当に歴史的なフレーズだ!

このフレーズと交互に色々なパターンのソロが登場する。本当に構成が上手い!

ホンワカしたシンセが出て、ギターが低音を刻むと「Into The Arena」に近いマイナーの曲調になり、ガッツポーズ!いいメロディー。

型のようなフレーズが規則的にどんどん上昇して展開、分身の術の忍者に取り囲まれたような感じ。そしてリタルダンド。

そして最後にネモ船長の船は、波に揺られゆったりと優雅に進む。詳しい物語は知らないがイメージ。A~Fのコード進行が特徴。

これだけハッキリとした物語がある素晴らしいインストゥルメンタルを作るマイケルの才能!みんながこぞって「神」と呼ぶのはムリもない。

side B

6)Still Love That Little Devil

ロックンロールだかダンス・ナンバーだか表現し難いが、結構ゴキゲンなナンバーだ!

ゴキゲンなナンバーを苦しそうに歌うゲイリー。

USミックスでヴォーカルをデレク・セント・ホルムスに差し替えられた。

しかしどうだ?!「I’m Gonna Make You Mine」を見事に歌ったデレクだが、この曲の歌声はへなちょこに聞こえる!ゲイリーのがなんぼかマシだ!

何故だろう?

ギター・ソロもない。

7)Red Sky

低音のギターのメロディー主体のリフ!これもクライ・ベイビーが掛かっていてマイケルらしい音色!

バンドと共にカッコ良く前進!ギターは3度のハーモニーを伴う。そしてこのフレーズ。ヨーロッパの「Wings Of Tomorrow」に影響を与えているのかな?雰囲気が似ているぞ。

Laughing in the face~

ゲイリーが歌うので「MSG」サウンドだが、ジョーイ・テンペストが歌ったら「Wings Of Tomorrow」に聞こえるかも。逆に「Wings Of Tomorrow」をゲイリーが歌ったら「MSG」に聞こえるかも。

Red Sky !

こちらもオーソドックスながら正統派のハード・ロックしていてカッコいいサビだ!

ギター・ソロは独特のセンスで見事に構築されている!計算され尽くした完璧なメロディー、意外性のあるコード進行、劇的な展開!一切の妥協のないクオリティーである!

スローダウンしての、壮大な映像が眼前に広がるようなアレンジは本当に素晴らしい!

再びゲイリーは歌う。ここまで来ると、とても頼もしい歌声に聞こえる!さすがだ!

エンディングもたっぷりギター・ソロが聴ける。フロント・ピックアップの音は甘く柔らかく、フルートのような音色に感じる!

大満足の名曲!

8)Time Waits(For No One)

もう1曲アンディ・ナイの曲。やはりシンセのリフから始まる。シャッフルのリズムが心地よい。

You kept me thinking~

ゲイリーの低音域の歌声がとても素晴らしい。ここまでなら一級品のAORとして通用する。

When there’s no connection !

1オクターブ上がる。これくらいなら大丈夫、愛すべきゲイリー節だ。

Time waits for no one !

そしてサビはメジャー・キーに変化!アンディ・ナイの得意技ですね。本当にいい作曲センスを持っている。アンディもせっかくいい仕事にありついたのに「MSG」が崩壊してしまい、落胆していました。本当に音楽の世界は…。

そしてマイケルのギター。ひたすら美しいメロディーを奏でる。テクニックをひけらかす事には興味がない、そんな必要ない。

ブレイクしてアンディのシンセがパルス波の音色でキメのフレーズを放つ!これは美しい!3音が繰り返され徐々に変化、上昇して行く!本当に素晴らしい!

ゲイリーの歌声が再び登場、この曲もいい歌を聴かせてくれた。

最後にマイケルはメジャー・サウンドに乗り、のびのびとギターを歌わせる。

B面の後半でありながらこれほど高いクオリティーを誇る名曲が聴けるとは。そういえば名曲「Looking For Love」もこの位置に配されていた。

9)Rock Will Never Die(Walk The Stage)

イントロのBmの1弦解放のコード(ギターの事がわからない方スミマセン)によるアルペジオが印象的。

そしてこの曲は、クリーンでメロウなギターフレーズで何とストラトキャスターを使っているらしい!当時のヤング・ギターのインタビューで明らかになりました。

インタビュアーの方がそれに言及するとマイケルは「まさにストラトだよ!分かったなんて信じられないよ!」と驚いていました。

このイントロのソロもストラトに聞こえますがそうなんでしょうか?

Dream on, dream on~

ゲイリーが思いを込めて歌う。この曲でも素晴らしい歌声を聴かせてくれる。メロディーも美しいし、ゲイリーの才能を実感する。

walk the stage with me tonight !

ここからハード・ドライビングに展開する!スローだがへヴィーで緊迫感のあるサウンドだ!

Rock will never die !

ゲイリーの気迫のこもった歌声が轟く!素直にカッコいい歌唱だと思う!曲調もドラマのエンディング・ソングみたいで心にグッと迫るモノがある!

マイケルのソロも魂がほとばしるような情念を放ちカッコいい!これぞロック・ギター!

To see you marching in !

曲は最高潮を迎える!ロックに人生をかける男の生き様、魂の叫び、そして燃えたぎる命!悔いはない!

そしてスローダウン。マイケルのメロウなギターが咽び泣く。

As the echo’s fade~

ゲイリーは命を振り絞って歌う。ここまで来ると心は動く。わかったよゲイリー、存分に振り絞ってくれ、もう何も言わない(涙)。

ゲイリーの事が理解出来た気がする。

「やっと分かったのかい?」と私に語るようにマイケルはソロを繰り出す!我が道を行くかのように…。

自分で文章を書きながら感動してしまいました。私も実際に書くまでは、どんな文章を書くのかわからないのです。

そしてハマースミス・オデオンに於いて歴史的なライヴを披露して、素晴らしいライヴ・アルバム「Rock Will Never Die」を発表する!

〈MSG〉

Michael Schenker:Guitars

Gary Barden:Vocals

Chris Glen:Bass

Ted McKenna:Drums

Andy Nye:Keyboads

そしてテッド・マッケンナのご冥福をお祈り致します。

THE MICHAEL SCHENKER GROUP / Built To Destroy を語る。

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お越し頂き、ありがとうございました。また お逢い致しましょう。

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