第198話 スティーヴ・ハケット/ヴォヤージ・オブ・ジ・アカライト を語る

スティーヴ・ハケット/ヴォヤージ・オブ・ジ・アカライト 1975年 発表。

「ジェネシス」からピーター・ガブリエルが脱退し、バンドは危機をむかえる。そんな中、制作されたスティーヴ・ハケットの傑作1stソロ・アルバム!

長い歴史を持つバンドは、その途中で様々なトラブルに直前する。そしてそれを乗り越えて偉大な存在となる。

「ジェネシス」の歴史もまたしかり。

ピーター・ガブリエルの脱退は大事件だった。いや普通あり得ない!まさかである!

残されたメンバーはソロ・アルバムを制作する。

「ジェネシス」の大切な音楽的要素はスティーヴ・ハケットだった、という事が明確になった。

とは言うものの、このアルバムの音楽は「ジェネシス」そのものではなく、現在まで長きに渡って続く、他の誰でもない「スティーヴ・ハケットの音楽」なのである。

それは目も眩む程の圧倒的完成度を誇るシンフォニック・ロックで、ソロ・アーティストの範疇を越えたクオリティーである!

スティーヴ・ハケットの恐るべき創造性の翼は解き放たれた!

〈Voyage of the Acolyte〉

side one

1)Ace of Wands

ドラムのフィルインからスリリングなジャズ・ロック風のサウンド!変則的リズムで息をもつかせぬ展開!

宝石の様な12弦ギターのアルペジオから、笛の音色のキーボード(?)が高速アルペジオ!そして鐘の音とコーラス・メロトロンがファンタジーの世界に連れて行く!

何と夢のある音楽だろうか!平山照継氏も影響を受けたのかな?

そしてスローパートから激しいギターのストローク!シンセ・リードがファンタジックなメロディーを奏で、スティーヴ・ハケットのモジュレーション系ツインリードが登場!

場面展開も激しく、この1曲の中にドラマが詰まっている!さすがの力作で、聞き応え抜群のオープニング!

2)Hands of the Priestess Part 1

もの悲しいアルペジオに続いて、幽幻なメロトロンが湧き上がる。あたり一面に妖気が漂う。

そして美しいフルートが蝶のように舞う。それは安らぎと不安を感じさせるメロディー。私の心は魔法に掛かったよう。恍惚とした時が流れる。

そしてスティーヴ・ハケットのヴォリューム奏法のギターが入れ替わる。さみしいメロディー。

夢のまた夢のように繰り返し、消えてゆく…

3)A Tower Struck Down

何か邪悪なモノが忍び寄る。重苦しい雰囲気だ。「うる星やつら」のBGMを思わせる。

「ピンク・フロイド」の「On The Run」風のシンセが暴れ回る!効果音も出て来て如何にもだ!

不安なメロトロンが湧き出たかと思うと、さみしいベースがポロンポロンとひとり呟く。

4)Hands of the Priestess Part 2

安らぎと不安のフルートが再び現れると、続いてオーボエが明日への希望を奏でる。心が洗われるメロディーだ。

蝶のようにフルートが舞い、ギターが「Ace of Wands」のクライマックスに登場したメロディーを優雅に奏で、寄り添う。

ため息が出る程美しい…。

5)The Hermit

悲しいアルペジオ。そしてスティーヴ・ハケットの内省的なヴォーカル。今ではプログレを代表するブリティッシュ・ヴォイスのひとりとなった。

美しい12弦ギターとジョン・ハケットのフルート。チェロの音色もさりげない。

オーボエが「スノー・グース」の様な情景を見せ、心が溶けてゆく様な郷愁感が漂う。

スティーヴ・ハケットの描いた心の風景はどこまでも美しい。

side two

6)Star of Sirius

安らかなアルペジオに乗せオーボエが歌い、フィル・コリンズの歌声も続く。英国の香りが漂い、何とも幻想的だ。妖精が辺りを翔んでいそうな雰囲気。

16ビートのリズムがスリリングに刻まれ、フィル・コリンズの歌声と一体になる。さすがに「ジェネシス」を感じる。

静けさを取り戻し、美しいアルペジオとシンセサイザー。不安が忍び寄り、ただならぬ雰囲気。

するとオーボエが「Hands of the Priestess Part 2」の明日への希望のメロディーを奏でる!心が洗われるようで感動的だ!

再び美しいアルペジオとシンセサイザー。

16ビートが刻まれ、フィル・コリンズの歌声が柔らかに流れる。シンセ・リードが合いの手で登場する。スティーヴ・ハケットのモジュレーション系ギターも躍動する。

2度ブレイクが入り、輝きの12弦ギターが挿入される。手がこんでいる。

フィルのヴォーカルとスティーヴのギターが仲良くシンフォニーを奏で、消えてゆく。

美しい詩と音楽による物語に心を委ねる。素晴らしいひとときだ。

7)The Lovers

現在までライフワークのように続くクラシック・ギター。心を癒す演奏に心を奪われる。

そしてなにやら、フルートか何かの逆回転が、幽霊のように漂い消えてゆく。

8)Shadow of the Hierophant

荘厳なシンフォニック・サウンドが響き渡る!コード進行も感動的だ!

クラシック・ギターのアルペジオに乗せ、サリー・オールドフィールドの女神の歌声が降臨する!何と美しい!メロディーもあり得ない程美しい!完璧だ!

再び荘厳なシンフォニック・サウンド!

再びサリー・オールドフィールドの女神の歌声!本当に素晴らしい!

そして再び荘厳なシンフォニック・サウンド!

サリー・オールドフィールドの女神の歌声に天使のフルートが寄り添う!

そして再び荘厳なシンフォニック・サウンド!

スティーヴ・ハケットのタッピングが魔法のうねりを起こし、リード・ギターは優雅なツインリードの羽を広げる!

グロッケン・シュピールの様な音がさみしげに響き渡る。

〈最終章〉

ヴォリューム奏法のギターは3つの音で和音を奏で、コードを劇的に変化させて行く!小さな音はやがて大きく荘厳に!

メロトロン、シンセサイザー、鐘の音は響き渡り、ドラムは激しく打ち鳴らされる!

グレート・エクリプスの時がやって来たのだ!

自らの恐るべき創造性の翼を解き放ったスティーヴ・ハケットは、「ジェネシス」であと2枚のアルバムを発表した後、脱退する。そしてソロ活動へ。

途方もない枚数のアルバムを発表した今も、その才能の泉は涸れる事はない。

ブリティッシュ・ロックの巨匠。

恐るべし…

INSTRUMENTATION

STEVE HACKETT:Electric&Acoustic Guitars, Mellotron, Harmonium, bells, autoharp, vocal, effects

John Hackett:Flute, Arp Synthesizer, bells

Mike Rutherford:Bass guitar, Bass pedals, Fuzz 12strings

Phil Collins:Drums, vibes, percussion, vocals

John Acock:Elka Rhapsody, Mellotron, Harmonium, piano

Sally Oldfield:Vocal

Robin Miller:Oboe, Cor Anglais

Nigel Warren-Green:Solo Cello

STEVE HACKETT/Voyage of the Acolyte を語る。

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お越し頂き、ありがとうございました。また お逢い致しましょう。

トリスタン

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