ブラック・サバス/ディヒューマナイザー 1992年発表。
名盤「TYR」を発表し、まさに黄金時代を築いていたブラック・サバス。しかしまさかの展開が待ち受けていた。そう帝王ロニー・ジェイムス・ディオの復活である!
はじめに
私はロニーを崇拝する者であり、ロニーに対するネガティブな意図は一切ありません。
「TYR」はまさに珠玉の名盤であった。ブラック・サバス史上最高の黄金時代を築いていたと言っても過言ではない。ツイッターにおいても「ヘッドレス・クロス」「TYR」の人気は圧倒的である。
そして晴天の霹靂の如くそれは報じられた。
「ロニー・ジェイムス・ディオがブラック・サバスに復活する!」
ちょっと待て、今トニー・マーティンとコージー・パウエルがいて最高の状態なんだけど!?
ファンの戸惑いをよそに、かくしてトニー・マーティンとコージー・パウエルは脱退。ロニーとヴィニー・アピスを迎えて新作は制作された。
そう、トニー・マーティンとコージーを含む黄金時代を破壊したA級戦犯はロニーであった。せっかくコージーは末長くサバスに在籍するつもりだったのに。
タイミングが悪かった。
そりゃね、そりゃね、「フォービドゥン」という迷作を発表し、「トニー・マーティン期のサバスも最早これまでか…」と思われていた時に救世主のように、ケンシロウのように現れたなら最高のタイミングだっただろう。
しかし現実は「あの黄金時代を破壊したからには「ヘッドレス・クロス」「TYR」を越える様式美作品を作らなければ許さん!」とファンの間で緊張感は高まった!と思う。
かくして発表されたのはファンの期待に応えない別次元の名盤であった!
一部のファンの方はがっかりされたようです。
しかし名盤です!邪悪でへヴィー!ロニーの禍々しさを最高に活かした音楽性はまさに圧倒的です!
私ははじめから分かっていました。かつてのロニー期の作品は素晴らしいですが、「様式美」においては「TYR」の方がはるかに上なのです。あれを越える事はロニーが戻っても無理なのです。
なので「様式美」は期待していませんでした。帝王ロニー時代の新たなる幕開けを見届けるのみです。
〈DEHUMANIZER〉
1)Computer God
コンピューターと言いながらインダストリアルなSEが流れる。そしてコージーとは明らかに違うドラムサウンドが響き渡る!そう違う音楽が始まるのだ。
いかにもへヴィー・メタルなリフに導かれロニーの邪悪な歌声が轟く!何と言う禍々しい歌声だろうか!しかし途轍もなく刺激的でインパクトがある!私はシビレた!もうこの瞬間にこのアルバムに心を奪われました。様式美を期待していなくて良かったと思います。
中間部で静かになりトニーのアルペジオが流れ、ロニーのメロウで叙情的な歌声。罪人の贖罪の祈りのようです。これは本当に美しいですし期待を裏切らないモノが聴けたと思います。そしてオジーの「Diary Of A Madman」の中間部を思わせます。
後半はアップテンポでトニーのギターソロが炸裂!そしてそのままロニーのアグレッシブな歌唱!この辺りの展開は「Heaven &Hell」の伝統を再現してくれたようで、圧倒的にカッコいいです!
〈電脳の神〉
今はまさにAIが猛威をふるう世の中、この曲に込められたメッセージを今一度考え直す時かも知れません。
2)After All
トニー・アイオミの低音域のギターが不気味に蠢く。よくもまあこんなに不気味なラインを思い付きますね。さすがです。そしてギーザーのベースもユニゾンで参入する。
そしてバンド全体が激しく炸裂する!ロニーの歌声はやはり邪悪で禍々しい!バンドもこれでもかという程にダークで重いプレイで引きずり回す!これぞサバス!
With my mi~nd!
とロニーが強烈に声を伸ばす!そして!ハイハットに導かれた後、ヴィニーのバスドラが4発踏み込まれる。それはまるで悪魔が一歩一歩とこちらに向かって歩を進めているようである!これ程までに不気味なバスドラがメタル史にあっただろうか?!最恐です!
途中からややポップなメロディーになり
After All!
と歌われるが明るい!邪悪なフレーズと明るいフレーズが混合する異次元感覚!
ライヴDVD「Radio City Music Hall」のオープニングでプレイされた名曲ですが、LOUDPARKでは期待していたのにプレイされなくて軽いショックを受けました。
3)TV Crime
TVによる犯罪
TVは民衆を愚かにしておくための洗脳装置である。政治家、権力者、大企業、支配者はマスメディアを使って民衆をコントロールする。
「Operation:mindcrime」でジェフ・テイトも警告していた。
決してTVを信用してはならない。ヤツラは嘘しか言わない。デマの新型コ○ナの情報を流し、人々に毒薬であるワ○チンを射つように薦めた。多数の有名人をはじめ、どれ程の方が亡くなり、どれ程の方が重篤な健康被害を受け、どれ程の方が体調不良に悩まされている事か。
今の惨状を天国のロニーが見たらさぞかし悲しむであろう。「私のメッセージは届かなかったのか?」と。
このアップテンポの名曲を聴いて改めて考え直さなければならない。
しかしこの邪悪なサウンドが疾走する様は本当に圧巻ですね!トニーのギターソロも凄いです!
4)Letters From Earth
再びへヴィーなリフで攻める!イントロではこのリフの中に高音弦のアルペジオを絡ませているセンスが良いです。(Snow Blind風)
ロニーの歌声はやはり禍々しいものの、DIO時代にも通ずる馴染み易いメロディーでとても良い感じです。
次の展開ではドラマチックで哀愁を感じるメロディーが現れ、ただ流される事なく聴き手を引き付けます。この辺りは上手いですね!
そしてテンポアップしてトニーのギターソロ。途中でダンダン!とブレイクして盛り上げます!トリッキーさも交えたプレイはカッコいいですね!
再びへヴィーなテンポに戻り、曲は終わりへと向かいます。この曲は短い中にもしっかりとドラマが盛り込まれており、見過ごせない良い曲です。
5)Master Of Insanity
不気味なSEに続き、変則リズムに乗りギーザーのベースがこれまた不気味なラインを奏でる!そしてギターも加わると邪悪サバスの完成!これはライヴで観たら凄くカッコいいでしょうね!
メインリフが始まり軽快なテンポで曲は進む!そしてギターは16ビートで刻みブレイクを交える印象的なバッキングにロニーの歌声が乗る!これはとても見事なアレンジではないでしょうか。
スローでドラマチックなBメロとカッコいいサビが完璧な流れです!
ギターソロはスローなリズムに乗り、じっくり聴かせます。こうしてリズムやアレンジが一本調子にならず、細かく展開させる妙技が曲に深みを与えています。
曲の最後はイントロのあの不気味なユニゾンで(ギターソロの前にも出て来る)、曲の組み立て方が本当に上手いですね!あっと言う間に終わってしまうように聴こえます。まさにベテランの匠の技と言う所でしょうか。
Computer Godと並んでアルバムのリーダートラックとも言える貫禄の名曲ですね!
6)Time Machine
後半(B面?)は再びアップテンポで「Symptom Of The Universe」を思わせるリフが良いです!
ロニーの歌に入るとこちらもやはりDIO系の正統派へヴィー・メタルという感じですが、サビでは明るくキャッチーなヴァイブを発します。しかし違和感は無くとても良い感じです!そういう意味では「Neon Knight」に通ずるモノがありますね。
間奏は何と言ってもギーザーのベースの導入部が良いですね。ギターソロはトニー節で聴かせますが、エンディングのソロのほうに何やら特殊なエフェクトが掛かっており何かを狙っていますね。
TV Crimeと共にシングル向けの曲です。
7)Sins Of The Father
いきなり明るいメロディーです!この先この曲は何処へ向かうのか?と思っていたらしっかりダークな曲調に戻りました。
途中でへヴィーなテンポは一変して軽快な8ビートに変形。このリズムはクセになります!これは「サボタージュ」で聴ける明るさやリズムですね。
ロニーの書く意味深な歌詞に注目して曲を聴くとまるでロックオペラのようであり、曲の緻密な展開のさせ方の意味も見えてくる感じです。
なのでこの曲は歌詞対訳を見ながら聴く事をお薦めします。曲の本質に迫り、魅力は増すでしょう。
アルバム全体をざっと聴いていると流れていってしまいがちですが、どの曲も「この一曲」に集中して聴くと、しっかりとした構成、展開、アレンジがなされており職人芸を感じますね。万人向けの音楽とは言えない部分もあります。
8)Too Late
神秘のシンセが立ち込める中、アコースティック・ギターが淋しげに和音を散りばめる。
そしてロニーの美しい歌声が一人の男の嘆きを紡ぎ出す時、そこにマジックが生まれる!これぞロニー・サバスの真髄!「Children Of The Sea」や「Sign Of The Southern Cross」の感動が蘇る!
バンドが入り、曲は劇的に進行して行く。
It’s Too late!
ロニーの帝王ヴォイスは強力に曲を超次元へと昇華させて行く!あまりにも素晴らしい!
そして効果音の後
トニーの魔王の如きへヴィーなリフが重厚に立ちはだかり、完膚なきまでに威厳を示す!
Oh Oh Oh Save me~!
それに呼応し帝王ロニーの咆哮は、生きとし生ける者全てをひれ伏し君臨する!Save meはこっちです。
そしてトニーのギターソロはもう「これしかない!」という程に圧倒的な貫禄で曲を佳境に連行する!
再びロニーの聖なる声がひとときの美を奏でる。
最後にロニー歌声とトニーのリフが魔界の狂乱のように猛威を震い、終末へとなだれ込む。
この曲こそはかつてのロニー期を期待していた全てのファンを狂喜させる名曲ではないでしょうか!いくらトニー・マーティンが素晴らしくてもこの貫禄、威厳には敵わないと思います!
もし先行でこの曲のみを発表していたらファンの期待は最高値まで高まったと思います!
9)I
珍しくブルース・フィーリングのギターで始まります。そしてすぐにへヴィーなリフ、そしてロニーのパワフルな歌声が続きます。
曲自体は全体の中で特に目立つ部分はないのですが、ひとりで物事に立ち向かう歌詞のメッセージが気に入っているのでしょうか、ロニーは好んでこの曲をライヴのセットに入れていますね。
10)Buried Alive
こちらもへヴィーで禍々しいヴァイブの曲です。そしてやはりこちらも特に展開は無く淡々と進む感じの曲ですが、サビのメロディーはなかなか取っつき易く良いです。
「Too Late」で感動を貰ったので後はオマケみたいな印象です。決してクオリティーは低くないです。
何でしたら「Too Late」で一旦再生を止めて、後でこの2曲を聴くのもアリです。
このアルバムがどの程度成功したのか分かりませんが、ツアーも行われてそれなりに盛況でした。しかし次はなくロニーは脱退、まさかのトニー・マーティン復活という支離滅裂な流れとなりました。
そういえばロブ・ハルフォードが代役を務めるという事もありましたね。
その後2007年に「Heaven And Hell」で感動をくれたのは記憶に新しいですね。
そしてロニー・ジェイムス・ディオのご冥福をお祈り致します。
〈BLACK SABBATH〉
Tony Iommi:Guitar
Ronnie James Dio:Vocals
Geezer Butler:Bass
Vinny Appice:Drums
BLACK SABBATH / DEHUMANIZER を語る。
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お越し頂き、ありがとうございました。また お逢い致しましょう。
トリスタン
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