フェア・ウォーニング/4(Four)2000年発表。
〈追悼 ヘルゲ・エンゲルケ〉
今日6月28日は、ふた月前の4月28日に亡くなったヘルゲ・エンゲルケの月命日です。心よりご冥福をお祈りいたします。
名盤「Go !」を発表し、来日公演も大成功!ライヴ・アルバム発表と進撃するフェア・ウォーニング!全日本が注目する新作はこれまた期待を上回る凄い名作となった!
「Go !」は本当に素晴らしい作品でした。大体名盤を出すとネタ切れになり、次はつまらなくなる場合も多いですが、彼らには当てはまりません!良い曲は無尽蔵に作れるようです。
それは先行発売されたシングル「Heart On The Run」で見事に証明され、期待は最高潮に高まりました!
レコード会社は新たにマーキー、アヴァロンとなり心機一転という感じです。ゼロ・コーポレーションの帯デザインも印象的でしたが、アヴァロンの雰囲気も格別ですね。
前作からヘルゲが使用するようになったヘルゲ考案の新スカイギター「NCC – 1701 H」も益々磨きがかかり、圧倒的な存在感です!
アンディ・マレツェクとのコンビネーションも健在ですが、ドラムのCCベーレンスは「I Fight」のみの参加となりました。
しかし本当に素晴らしい曲ばかりですね!「I Fight」のようなど真ん中のカッコいい曲や「Dream」の広大なノリの曲、ラストの「For The Young」の壮大さ、そしてボーナスの「Still I Believe」など、その才能に驚くばかりです!
〈4(Four)〉
1)Heart On The Run
東方の響きに導かれ、中世の吟遊詩人が掻き鳴らすキタラの如き弦の乱舞。
そして一羽のコンドルが天空に向かい飛翔するかのようなスカイギターの音は、いにしえと現在を結び、我々を一瞬にして異世界へと連れて行く!
メインリフのオリエンタルなメロディー、それは「Eastern Sun」「Stars And The Moon」の血を受け継ぎ、新たな伝承となる。
トミーの情熱的な歌声が示す道筋の先には希望の光が差している。それは約束の地か。
Heart On The Run !
神器スカイギターの旋律は時の流れに乗るようにただひたすらに美しい!森羅万象の理に逆らわず、あるがままの生命の躍動を映し出している。そしてその背後では人々の唱和がこだまする!
Heart On The Run !
逃げまどう心を包み込み、その涙の向こうにある浄土へと導いて行く旋律。それは私達の夢に寄り添い、共に生きている。
最後にヘルゲの意志はスカイギターに乗り、更なる高みへと翔け昇り、天上世界の景色を私達に見せてくれる。
吟遊詩人の掻き鳴らすキタラは遠く、彼方までその響きを伝え続ける。
2)Through The Fire
ナチュラルな歪みがクールなギターリフ、そしてオルガンの乱入!70年代テイストのロック・パーティーが始まる!
トミーが歌い出すとレインボーの「Starstruck」風の歌い回しにニンマリする!いいね~!
Through The Fire !
メインリフに乗せてロックの王道たるメロディーで攻める!しかしそのリフがヒトクセあるフレーズなのでマンネリ感は全くない!この曲を2曲目に持って来た自信は伊達ではない。
そしてギター・ソロのバックのコード進行がまた凝りに凝っていて凄い!
今までとは少し違う雰囲気を持った曲ですが、路線拡大としてはとても良いです。
3)Break Free
アコースティック・ギターの音が爽快に響きスタート!フェア・ウォーニングのもうひとつの真骨頂ポジティブ・ソング!
苦しい時も楽しい時も辛い時も悲しい時も、無二の友人のように隣に寄り添って励ましてくれる、そんな温かいエネルギーをくれる音楽ですね。
ゆったりと明るく、少し哀愁を感じるメロディー。トミー・ハートの歌声は本当に心地良いです。
Break Free !
明日の翼に乗って!
ヘルゲのギターはもうひとつの曲のように伸びやかに歌う。本当に素晴らしい。
友と過ごした大切なひととき、それはいくら時がたとうとも色褪せる事はない。
4)Forever
へヴィーなギター・リフが空気を切り裂き、パワフルなロックが始まる!ワウを効果的に使ったギターのメロディーも良いですね。
トミーが歌い始めるとそれはデビュー当時からの普遍のメロディー!カッコいいですね。
Forever we will change !
歌詞ではずっと変わって行くと言ってますが、この素晴らしい美旋律は変わりませんね。そしてこの重厚なコーラスも魅力的です。
ヘルゲのギター・ソロはブレイクをふんだんに使い、クライマックスの連続のように盛り上がります!いやこれもカッコいいですね!
エンディングの希望に満ちたソロも素晴らしい!スカイギターでこれをやると本当に天上に繋がっていく気がします。
5)Tell Me I’m Wrong
こちらもデビュー当時から普遍の美しいバラードで「Long Gone」「Take Me Up」を思い出します。
ヨーロッパのバンドらしい優雅で気品があるメロディーにうっとりしますね。映画とかに使ってもピッタリです。
ギター・ソロはアンディ・マレツェクでとても華麗で美しいですね。
★YouTube/Tell Me I’m Wrongはこちら
6)Dream
大陸的なゆったりとどっしりしたリズムが印象的な夢と希望のラヴソング!もうイントロから来てます!
歌が始まってひたすら明るいのかと思ったのですが、Bメロから少し暗く哀愁が漂い始めます。サビはイントロのコード進行そのままではなくヒネリが加えられています。この辺の芸が細かいですね!
2コーラス目のサビの後の「Dream !」はもうマイナーの世界に突入してしまいます。夢の世界というモノは予想外の方向にどんどん変わって行きますが、まさにそれを表現しているかのようです。
ヘルゲのギター・ソロでは出口を求めて異世界をさ迷いつつ、やっと出口に辿り着く様子が表れていますね。ドラムが派手に盛り上げる感じも良いです!
とても高度なレベルでの遊び心が結晶化した名曲ではないでしょうか!
7)I Fight
ここで出ました!フェア・ウォーニングのキメの正統派ナンバー!いや、カッコいいですね!LP時代ならここからB面でしょうか。
イントロのギターのメロディーからもう完璧ですね!歌に入る前のトーステンさんのシンセ、そして歌い出しのメロディーも理想的で、もうこれだけで名曲決定です!
ヨーロピアン・ハードロックのバンドはいかにこのような曲が作れるか、という命題がありますが、ベテランになるとネタも尽きて苦戦します。(ヨーロッパとは言いません)しかしウレ・リトゲンは永遠に書き続けられる気がしますね。(悲しいかな、ヘルゲはもういない)
I fight !
アファーイ!という単純で大胆なサビの作り方はどうでしょうか!まさに閃きと才能の成せる技です!下手にやればクソみたいな曲が出来ます。
続いての
when silence breaks at night !
のメロディーの素晴らしさはもう胸を締め付けますね!サビ後半の
and if my love~
からのメロディーも本当に素晴らしい!もういくらでも賛嘆します。
ギター・ソロはアンディ・マレツェクで、とても凝った幻想的なコード進行をバックにプレイします。これはまた芸術的ですね、本当に素晴らしいです!
エンディングではヘルゲが張り切ってソロをプレイ!
「Heart On The Run」と並ぶリーダートラックですね!
8)Time Will Tell
いきなり分厚いコーラス!そしてこれも大陸的雄大なリズムに身を委ねる。16ビートなので決して遅いとは感じない。
メロディーに特徴はないですが、Bメロからキーが転調に向かい、サビで完全にキーが変わります!この辺の細かい拘りはサスガです!
そしてやはり正統派マイナーでカッコいいです。曲の雰囲気が他と違うので埋もれる事はないですね。
そしてこちらもギター・ソロのコード進行が幻想的で、とても不思議な世界が目の前に広がります。
9)Eyes Of Love
シンコペーションが印象的なミドルテンポで、心が温かくなるタイプのメジャーソングです。
ギターの乾いた音が良いです。
こちらも取り立てて特徴のある曲ではないですが、トミーがこの路線を歌えばたちどころに名曲になります。
このサビのメロディーは心に沁みるなあ。
アコースティック・セットでプレイしたらとても良い雰囲気になりそうですね。
10)Find My Way
こちらはポジティブ全開のエネルギーを放っています!
Let me find my way !
いきなり印象的なサビが炸裂します!一片の曇りもない晴れ渡り澄みきった明るさです!
こう言う曲は余程才能がないと安っぽくなりますが、さすがにヘルゲの作曲センスは凄いです!この辺はドリームタイドにも受け継がれている気がします。
ギター・ソロもモロにストラトですかね!
哀愁音楽の天才は明るい音楽も素晴らしい!
11)Night Fall
トーステンさんの綺麗なシンセからアコギのアルペジオ。美しいイントロですね。
トミーのしっとりとした歌声が入ると1日の終わりが近づいて来るのを感じます。
曲のキャラとしては「Rain Song」とかぶるモノがありますが、これは雨の歌ではありません。夕暮れの歌です。
サビの哀愁がもうたまりません。
転調してギター・ソロですが、ナチュラルな音がとても良い雰囲気を出していますね。
11曲目という事で普通ならこのバラードでアルバムは終わるのですが、まだまだ続きます。しかも凄い名曲が控えています。
そこがフェア・ウォーニングの凄い所ですね。
12)Wait
前の曲からこの後の曲までバラードばかり続くので、少し元気な曲が挿入されております。
少しインパクトが弱い曲なので「Find My Way」あたりをここに持って来たほうが良いような気がします。
13)Still I Believe
この曲は一体何なのでしょうか?もうイントロから神聖なる空気が漂っています。
曲の作りやメロディーが他の曲とどう違うというのでしょうか?あり得ない程の神々しさを感じます。
曲を聴いているあいだ中ずっと天上界と繋がっている感じでトリハダが立ってしまいます。
具合の悪い方はこの曲を聴けば神の力を得て免疫が上がり健康になるのでは?!そして癌も治るのでは?!
そんな力を感じる曲です!
Aメロのコード進行がA~D/Aという分数コードを使っている所も良い効果です。
そしてサビではここまで高音域を使うか?という所まで行きます。実際ライヴでは歌えないのでフェイクしています。
しかしこのキーでなければダメなのです!この神々しさはこのキーで、この音域で、このアレンジで、このミックスで、どれが欠けてもダメなのです!
何という凄い曲でしょうか!しかもボーナス・トラック!
フェア・ウォーニングの恐ろしい所です。
しかし「Still I Believe」
この闇が蔓延る現代社会にあって、それでも私は信じるというメッセージは素晴らしいと思います。
Somehow we will find a way !
そう、私達は道を見つけるのです!
14)For The Young
前曲で天上界へと繋がり、この曲はついに天上界での讃歌となった!
それは法華経の第十一品の「見宝塔品」での「虚空会の儀式」を彷彿させ、全ての衆生が生命の歓喜に包まれる荘厳な場面のようでもある!
釈迦如来、多宝如来の化身ヘルゲは若き菩薩達に心からの言葉を送る。
「星という星が君達を導いてくれますように~」
続きは歌詞対訳を読んで頂きたいですが、ヘルゲの心からの遺言であるかのようです。
ヘルゲのスカイギターはさながら極楽浄土を飛翔する鳳凰の歌声のように崇高な響きで、私達を導いてくれます。
勇壮なボレロのリズム、「上を向いて歩こう」を思わせる旋律、雄大な合唱、本当に素晴らしい音楽です。
最後の鳥のさえずり、小川の流れは理想郷を映し出しています。
「For The Lonely」というアルバムに収録されなかった有名な名曲があります。同時期に存在した2つの「For The ~」の名曲。
こちらが選ばれたのでしょう。
この素晴らしいアルバムで更なる躍進が約束されたと思ったものの、トミー・ハートやアンディ・マレツェクの脱退により、フェア・ウォーニングは活動停止となってしまった。
そしてヘルゲ・エンゲルケはドリームタイド結成へと進んだ。
〈FAIR WARNING〉
Tommy Heart:Lead Vocals
Helge Engelke:Guitars
Andy Malecek:Guitars
Ule W. Ritgen:Bass
C C Behrens: Drums
Philippe Candas:Drums
Torsten Luederwaldt:Keyboard
FAIR WARNING / 4(Four) を語る。
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トリスタン
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