ディープ・パープル/ファイアボール 1971年 発表。
前作「イン・ロック」が成功し、ワールドツアーの合間に制作された本作。メンバーは納得いかない作品として有名だが、果たしてどうなのか!
今さらこんな事を言わなくても名盤に決まってるだろ!と言われそうですが、はい、名盤に決まっています。
まずメンバーは天才集団であるので、100%力を発揮すれば超名盤が生まれますが、そうでなくても名盤が生まれてしまう訳ですね。
つまり一番厳しい耳と感性を持つ天才による評価であり、そうでない私達は自分たちの耳と感性でこのアルバムを評価すればいい訳です。
名盤にしか聞こえないじゃありませんか。
改めてこのアルバムを聴いて感じるのは、「第二期パープルは激しく強力で、火花散るようなスリリングなサウンド」というイメージが刷り込まれて来たがそうではないな、という事です。
「紫の肖像」の記事を書いた時にも言いましたが、パープルは渋いブリティッシュ・サウンドが根底にあると感じるのです。
つまり「Speed King」「Fireball」「Highway Star」「Space Trackin’」等が突出しているためにそのイメージがある訳ですが、それ以外の曲はどうも渋いブリティッシュ・ロックに感じるのです。
あの「マシン・ヘッド」にさえ、「Maybe I'm A Leo」「Never Before」という渋い曲が収録されています。
つまり激しく強力な音楽のみを求めてパープルを聴くとパープルの音楽の本質を見誤り、その素晴らしさに気付かない恐れがあります。それは昔の私です。
渋いブリティッシュ・ロック・バンドがたまにはハードな曲もやる。これがディープ・パープルです。
どうか賢明な皆様はパープルの本質を理解し、正しくパープルを味わって下さい。
〈FIREBALL〉
side A
1)Fireball
マシン(何だろう)の作動する音!そしてイアン・ペイスのドラムが2バスで勢いよくスタート!もうカッコいい!ペインキラーの元祖!
The golden light above you !
イアン・ギランの重戦車ヴォーカルが轟く!バッキングのメロディーがまたカッコいい!
Oh my love it’s a~
この辺りのドラムがもう乱れ打ちみたいな感じでスリリングでカッコいいし、ロジャー・グローバーのベースが凄くセンスのいいラインを奏でている!
Ah~ Magic woman wreckin’ up~
ここはサビという感じではないが、凄いエネルギーが渦巻いていて手に汗握るようだ!
そしてロジャーのベース・ソロがヒステリックな音でウナリを上げる!ハード・ロックの歴史の中でも随一のカッコ良さ!
それに続いてジョン・ロードの強烈なオルガン・ソロ!狂気の世界を繰り広げる!
再びのイアン・ギランのヴォーカルの後は再びのジョン・ロードのオルガン!存分に弾き倒しています!
そして真打ち登場とばかりに打ち鳴らされるタンバリン!これが全部持って行きます!
さて、リッチー・ブラックモアはどうしたのでしょうか?影を潜めています。
イアン・ギラン、イアン・ペイス、ロジャー・グローバー、ジョン・ロードを味わう名曲です!
こんなカッコいい曲を作るのだからハードな面が注目されるのは仕方ない。
2)No No No
レイドバックしたようなリッチーの渋いギターが登場!
Really hate the running !
イアン・ギランが明るくキャッチーなメロディーをやはり重戦車のような声で歌う!
このキャッチーなメロディーにこの歌い方は少し暑苦しい感じもする。私の好みだとこの曲はぜひジョー・リン・ターナーに歌って欲しい。合っていると思います。
その歌のバックのロジャーのベース・ラインがとても素晴らしい!
そして歌の合間にさりげなく入るギターとベースのユニゾン・フレーズ(イントロのメロディー)がとてもイカしている。
歌の後の短いブルージーなギター・ソロがリラックスした感じでとてもいい!
そしてスライドバーを使ったリッチーの幻想的なソロが素晴らしい!その後はまた渋いブルージーなソロに。本当に聴かせてくれる!
再び歌が繰り返された後はジョン・ロードのオルガン。ポコポコとした音の軽いタッチから徐々に盛り上がるとブレイク!リッチーがキメのフレーズをプレイ!
よく聴けば至るところに聴きどころがあり、とても味わい深い。ブリティッシュ・ロックの職人達の匠の技です。
こんな凄い曲達を作っているのに納得がいかないアルバムとはこれ如何に?
3)Strange Kind Of Woman
英国盤には収録されなかった名曲で代わりに「Demon’s Eye」が収録されていたとか。
イントロはリッチーの印象的なフレーズにドラムが合わせてキメている。
There once was a woman !
シャッフルの弾むようなリズムが印象的で本当にキャッチーである。ディープ・パープルのポップ・センスが光る!
リッチーの長めのソロも聴くことが出来る。時折スタッカートをキメた独特のプレイも聴ける。
ライブではリッチーとイアンの掛け合いが聴きどころとなっています。
4)Anyone’s Daughter
カントリー風の和やかな曲。ジョン・ロードの軽やかなピアノが光る!
イアン・ギランの語るようなヴォーカルも楽しい。
ここまでの曲を聴いても非常にバリエーション豊かな音楽性があります。やはりパープルをパワフルなハード・ロック・バンドと型にはめる事は出来ないと思われる。
side B
5)The Mule
イアン・ペイスのドラム!このドラム・リフ!カッコいいじゃないですか!ピンク・フロイドの「神秘」に出て来るドラムにも似ている。
そしてこのテーマ・メロディー!見知らぬ世界への冒険への旅立ち!アドベンチャー!という感じで気分は高揚する!
No one sees the things~
イアン・ギランはリラックスした声で揚々としたメロディーを歌う。この感じも良きブリティッシュ・ロック!
そしてイアン・ペイスはドラム・リフをひたすら叩き続ける!
ジョン・ロードのキーボード。一風変わった音色、これはオルガンにエフェクトをかけた音なのか?ピンク・フロイドを聴いている感覚になる。
リッチーのギターとイアンのドラムが同時にソロを展開!これは凄まじい戦いだ!
イアンは再びリフを叩き、リッチーはソロを続ける!何ともトリップするような感じ。
再びメイン・テーマの後はジョンのオルガン!徐々に危機感が高まって来る!
ドラムのリバーブはどんどん深くなって行き、まさにサイケデリック!この冒険は何処にたどり着いたのか!?
最高のブリティッシュ・ロックが聴ける名曲!ライブではイアン・ギランの歌が終わるとすぐにドラム・ソロになってしまうのが残念。フルで聴きたい。
6)Fools
静かに始まる。ブルース風のメロディー、イアンのウィスパー・ヴォーカル、オルガン…。
I can see~
イアン・ギランがへヴィーなサウンドと共に強烈にシャウト!「イン・ロック」の雰囲気が甦る!
歌が終わるとドラムのみが静かに淡々とリズムを刻む。
リッチーがヴォリューム奏法でゆっくりと奏でる。瞑想しているかのようである。
静寂を破りへヴィーなサウンド、イアンのシャウトが再び登場!この曲はこの対比が決め手。
最後はへヴィーなオルガンが不気味に鳴り響いて余韻を残す。
7)No One Came
ベースが4分音符で刻まれる。
唐突にバンドとヴォーカルも参入!するとベースは裏の拍でプレイしていた事が判明する!小癪なマネを!こういうところも名人芸と言える。
Maybe It’s because~
こちらもイアンは重戦車のように歌う!本当にパワーあると思います。今のヴォーカルでこんな感じの人います?
ドラムはハイハットの使い方が特徴があっていいですね。
そしてリッチーはブルージーなソロを結構長めにプレイ!のびのびと弾いていてとてもいい!
その後はジョン・ロードのオルガン・ソロ。こちらものびのびとプレイ!
再びイアン・ギランの歌!シャウトだけでなく途中で語るように歌う部分もあり、なかなかの表現力!
歌が終わってこれで終りかと思ったら再び息を吹き返し、またリフが始まる!
何かの楽器の逆回転音が飛び出して来る!何の音でしょうか?そしてフェードアウトして行く。
名曲ですとアピールする程ではありませんが、ブリティッシュ・ロックを味わうという意味で十分楽しめます。
〈英国盤収録曲〉Demon’s Eye
キーボード(?)の低音がリズムを刻む!
そしてあの印象的なリフが始まりイアン・ギランも歌う!
I don’t mind !
パワフルなイアン節ですね。しかしこのリフが印象的過ぎてヴォーカルは頭に残りません。「Strange Kind Of Woman」とは対照的ですね。何故イギリスはこちらを収録したのでしょうか?というか両方入れとけば?と思います。
オルガン・ソロとギター・ソロも普通に楽しめます。
最後はイアンとリッチーが入り乱れてフェードアウトして行く。
この曲はイングヴェイが最初気に入った曲として有名ですね。ジョー・リン・ターナーのヴォーカルでカバーもしてます。
さあ、次はいよいよ「Machine Head」だ!
〈DEEP PURPLE〉
Ritchie Blackmore:Guitars
Ian Gillan:Vocals
Jon Lord:Keyboads
Ian Paice:Drums
Roger Glover:Bass
そしてジョン・ロードのご冥福をお祈り致します。
Deep Purple /Fireballを語る。
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トリスタン
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