第217話 ハロウィン/ ピンク・バブルズ・ゴー・エイプ を語る

ハロウィン/ピンク・バブルズ・ゴー・エイプ 1991年 発表。

カイ・ハンセンの脱退、レコード会社の移籍など、問題に直面していたハロウィンの問題作!

何とカイ・ハンセンが脱退!これは衝撃的だった!そんな事が起こるとは夢にも思わなかった!

しかし、おかけで「ガンマ・レイ」という素晴らしいバンドが生まれた。

後任はローランド・グラポウ。なかなかのギタリストである。このアルバムの中で最も素晴らしい3曲を書いたのは彼だ!

そしてアレンジも細かい部分まで行き届いている。

素直に私は彼の才能に敬服した。

ハロウィンの歴史上、問題になっているのは音楽性の変化だが、それは前作のパート2から始まっていた。

昔から「守護神伝」は2枚組にする予定だったとか言っていたが、嘘臭い。あの2枚は音楽性が違い過ぎる!時間と共に順当に変化していったと考える方が自然だ。

本当に2枚組で出ていたら、もっと違った内容になっていたと思います。

あの辺りから、キスクはクイーンを引き合いに出してバラエティーを口にする様になっていた。

これからのハロウィンはそうなって行く事は目に見えていた。

そしてこのアルバム。

プロデューサーのクリス・タンガリーデスは、ハロウィンをなるべく今まで通りのサウンドになる様にプロデュースした。

メンバーはプロデューサーのせいで、ただのへヴィ・メタルのアルバムになってしまってがっかりしたと言っていた。

ハロウィンはすでにカメレオンの様なアルバムを作る気満々だったのだ!

で、結局どうなんだと言われれば、私は好きである!もちろん「守護神伝」のが良い。それは当たり前である。あれはメタルの歴史の頂点の作品なので、あれ以上の作品を作るのは無理である。

実はこの頃、私はメタルから離れてオペラやプログレばかり聴いていた。突然現れたこの作品は、私を再びメタルに引き戻した記念すべきアルバムなのです!

メタルの素晴らしさを、感動を再び教えてくれたのです!特に「Mankind」の荘厳なサウンドにはぶっ飛んだ!

さすがハロウィン!これが素直な感想です。

〈pink bubbles go ape〉

1)Pink Bubbles Go Ape

マイケル・キスクによる弾き語り風の小曲。非常に軽い調子で皮肉な歌詞を歌う。

このアルバムが今までとは違う事を象徴している。

キスクの曲。

2)Kids Of The Century

こちらもキスクの曲。

如何にもロックといった感じの、パワフルでオーソドックスなイントロが炸裂!

We poison our hearts !

キスクはガナリ気味の声で、新しいハロウィンを元気良く歌う!しかし美しい メロディーをプレイするバンドが音楽性を変化させる場合、古い型のロックを導入するのは何故だろう?

曲が進むにつれ、メロディーに哀愁が帯びて来る。血は争えない。

We’re the Kids of the century !

サビではキスク節が炸裂!心に沁みるメロディーとハーモニー!そしてキスクの美しい声が感動的フレーズとなって襲い掛かる!明るいメロディーが放つ哀愁は破壊力抜群!

このフレーズ一発で、このアルバムが素晴らしいモノである事を確信した!

そしてギター・ソロだが、皆さんお気づきだろうか?

普通メタルのギター・ソロのバッキングはパワー・コードを刻むか、白玉で伸ばすという手抜きがほとんどだが、この曲はちゃんとリフのようなフレーズになっていて、それ自体で音楽が成立している。

このアルバムでは随所にソレが見受けられる。冒頭でローランドを褒めているくだりで、アレンジの細かい部分云々を言いましたが、この事です。勝手にローランドの手柄にしています。

But you run away !

そして後半に登場するキスクのこのフレーズ!美しい声を存分に伸ばして堪能させてくれる!そしてハーモニーを付けてダメ押し!そしてそのままサビに突入!これはもう素晴らしい展開でしょう!

新しいハロウィンのオープニングは大勝利であると宣言する!

3)Back On The Streets

ギターの低音のルート音をメインにしたシンプルなイントロ!勢いよくバンドが加わり、その上にソロが乗る!

I’ve been told~

また明るいノリのロックが始まった。しかし何とも言えないキャッチーさが支配していて聴くほどにハマっていく!キスクの歌声からは愉しげな空気が伝わって来る。

歌が終わると新たなリフの提示され、その上に華麗なギター・ソロが乗る!この曲もソロとバッキングが見事なアンサンブルを奏でている!

後半、ツイン・リードが登場!やはりグッと来る!終わるとディープ・パープル風のフレーズが登場してその場は大混乱!これはカッコいい!

Please Mr. know~

キーが上がって益々混乱を極める!

Back on the streets !

最後はディープ・パープル風のフレーズで閉める!

メタルからロックに先祖返りしている。まだまだ序の口です。

4)Number One

ヴァイキーの曲。シングルにもなりました。

低音域を中心にしたシリアスなイントロ。テンポはゆったりしている。

マイナーで始まっていい感じかと思ったが、どうにも地味である。

サビはまるで、その後のキスクのソロの曲みたいにゆるゆるな感じ。

ヴァイキーどうした?

5)Heavy Metal Hamsters

ヴァイキーとキスクの曲。

70年代風のリフで始まって、曲もタガが外れて悪のりしている感じ。

確かにこの曲はアイデアが空回りしてハンパな出来な感じがする。が、久しぶりに聴くとキスクが歌うハロウィンというだけで、当時より楽しんで問題なく聴ける!

リアルタイムというヤツはモノのありがたみがわからんのだ!

6)Goin’ Home

キスクの曲。

コミカルな感じのアップテンポで始まる!「Rise Or Fall」の雰囲気。

You think I could be~

歌が始まるとマイナー調で、また古いロックを感じさせる。

I’ll go home !

サビで一気に突き抜けた感じで明るくなる!これがまたいい!懐かしい友人、家族、故郷。再会を喜び素敵な時間を過ごす。というイメージ。コーラスも見事で心にグッと来る。続く、

By the time that you think~

のフレーズ!これも同様の空気を持ったままキスクのハイトーンの独唱で、澄み渡る空に突き抜ける美声!という感じで悶絶モノの素晴らしさ!本当にいいヴォーカリストだと思う!

ギター・ソロはやはりバッキングがいい!いや勿論ソロもいい!

マーカスのベース・ソロもイカしている!

これは本当にいい曲だ!このアルバムのベスト3曲はこの後に出て来るローランドの3曲だが、この曲も2)と並んで前半のハイライトと言える!

7)Someone’s Crying

ローランドの曲で、アルバムのベストのひとつ。

ハロウィンのスピード・メタルの血脈はこの曲に受け継がれた。しかし従来のサウンドではなく、新しい風が吹いている!

細かいブレイクに吼えるギター、テクニカルで流麗なアルペジオ風フレーズ、とても新鮮な感じだ!

What keeps on telling me~

歌のメロディーも、このアルバムのコンセプトに沿ったモノでキスクっぽくも聞こえる。

I feel strong !

このサビに於いてようやく正統派メタルのメロディーが登場する。

someone is crying, I know !

のパートはC~Amのコード進行を効果的に使い、また、キスクの美しい声と哀愁のメロディーが見事に融合し、芸術的なまでに素晴らしい!

しかし2バスのパワフルな疾走は凄いな。

2コーラス終わるとアイアン・メイデン風のフレーズが登場する!ドラムも暴れまわってカッコいい!

ギター・ソロはなかなか見事に構築されていて聞き応えがある!終盤のトリルだかタッピングだかのフレーズも効果的で、勢いだけでなく考え抜かれた作品という感じだ!素晴らしい!

サビを再び堪能して、最後は声がどんどん重なって行く!ラスト直前のFコードの使用がとても効果的で素晴らしい!

結局、保守的なメタル・ファンを喜ばせるのはこの様な曲である!しょうがない。

8)Mankind

ローランドとキスクの曲で、アルバムのベスト・チューンだと思う!「守護神伝」とは違う新しい形のエピック・メタルではないか!

厳かな低音域のキーボード?からベースのルート音が湧き上がり、荘厳なイントロが炸裂する!これはもうカッコ良すぎでしょう!

神のイカヅチ、審判の日、黙示録的な威厳があり、ベートーベンの交響曲の様でもある!

ギターの低音域のメロディーをミュートでプレイするフレーズはさながら悪魔の行進の様だ!

Gmに転調してアルペジオ風のフレーズをミュートでプレイする手法は高崎晃を思わせる。

Here is all mankind~

キスクによる人類の愚かさに警鐘を鳴らす歌詞であるが、海外アーティストは社会問題を取り上げる事が多い。日本とは違う。

Here you laugh !

表面的にきけば、ただ明るいメロディーなのだが、ここからサビを含め何かとてつもない深みがある。そこを聞き逃してはいけない!

There’s no tear for anything !

そしてこのサビ!荘厳にして神聖!まさに神の裁きを受けている様な畏怖を感じる!キスクのハイトーンも凄い!

「Twilight Of The Gods」という名曲があったが、あの世界観にも通じるかな。世界が次々に破壊されて行く映像が浮かぶ。

間奏はまさに黙示録というか混沌としたエネルギーが渦巻いている!恐ろしい!

しかしギター・ソロに入ると一転して明るくポジティブなエネルギーが支配する。それは世界が破壊されようとも、また復興させて行く人類のバイタリティー、未来への希望を感じさせる。

それでもキスクは歌い続ける。警鐘を鳴らし続ける。人類よ、目を覚ませと。

愚かな行為を犯し、反省し、また繰り返し。最後はその呆れた様子を描写した曲にも聞こえて来る。

ラストはイントロの、神のイカヅチで終わる。

いや、凄い曲である!

9)I’m Doing Fine, Crazy Man

マーカスとキスクの曲で、やはりメタルというよりはロックンロール・スピリットの曲。

アップテンポで、いかにもというイントロからスタート。

Thunder, flash and lightning~

キスクはいきなりハイトーンで歌いはじめるが、なかなかカッコいいメロディー!所謂クイーンズライク風メロディー!(次作の「I Believe」もそうだと思う)

そして楽しげなBメロを挟み、

You can’t see me !

サビは、これはまたサイケデリックなメロディーでぶっ飛んだ!このアルバム・ジャケットのヒプノシスの精神を見事に表している!この曲は侮れない!

70年代風フレーズで2コーラス目に繋がる。細かい芸が素晴らしい。

と思ったら次の展開、Bメロに行かず、急にスローでメロディアスになる!そしてギター・ソロへ!この非常識な構成!まさにヒプノシスの世界!

ギター・ソロの締めくくりもイカしている!聞き逃しのないように。

ここでやっと2回目のBメロが出てきて、サビに繋がる!この構成、理解出来ましたか?

ラストはまたカッコいい70年代風フレーズ。

マーカスの一曲入魂!

10)The Chance

ローランドの曲で、やはりベストの一曲!

もうイントロ一発目でノックアウト!カッコ良すぎ!そしてそのままアップテンポ!

We’re living in a~

もう歌い始めから完璧なカッコ良さ!音域的にも無理なくのびのびと歌えているし、キスクの魅力を存分に引き出していると思います。

The Chance you got~

サビはハーモニー付きで中音域から始まるが、

Do your best !

の部分でハイトーンになり、メロディーも強烈な哀愁を帯びる!みんなこの部分が大好きなハズだ!ローランドの作曲センスは凄い!そして続く、

You are on your way~!

この哀愁!たまらんでしょう!このフレーズがこのアルバムの頂点でしょうな。

ギター・ソロの頭で超絶フレーズをカマすローランド!ソロのあとは、へヴィーなリフ登場!なんか懐かしいへヴィ・メタルを聴いている感じ!

そしてキスクのF#の超ハイトーンがこだまする!これはカッコいい!完璧だ!これこそメタル!

そしてカッコいいサビへ!ワンフレーズ歌うとキーが上がって緊張感が増す!

ラストは変則的なコード進行で終わる!

「守護神伝」の曲に全くひけを取らない名曲だと思います!

11)Your Turn

キスクの曲。

キスクはこういうバラードが好きですね。昔のアメリカの感じだが、ジャーニーとはまた違う。

色々書こうと思ったが、どうもしっくり来ない。どうやら私の出番ではないらしい。

独特の風を吹かせながらアルバムは終わる。

★~★~★~★~★

この時の来日公演は見に行った!素晴らしかった!大盛況だったと思う。あ、ここで次のアルバムに入る「Revolution Now」と「In The Night」をプレイしていた。良かったと思った。勿論「Eagle Fly Free」「Keeper Of The Seven Keys」もやった。凄かったです。

〈HELLOWEEN〉

Michael Kiske:Vocals

Roland Grapow:Guitar

Michael Weikath:Guitar

Markus Grosskopf:Bass

Ingo Schwichtenberg:Drums

HELLOWEEN / Pink Bubbles Go Ape を語る。

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トリスタン

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