ゲイリー・ムーア/ヴィクティムズ・オブ・ザ・フューチャー 1983年 発表。
「大いなる野望」で素晴らしい音楽を確立したゲイリー・ムーア。へヴィ・メタルの風が世界に吹き荒れる中、堂々たる名盤を作り上げた!
炎の舞
日本先行発売のこの作品、邦題はこのタイトルでした。
前作の「大いなる野望」にしても、何故この素晴らしい邦題達を廃止したのだろうか?
そして英国での発売から現在に至り曲順、収録曲に変更があった。日本オリジナル盤に愛着があるのでどうしても違和感がある…。
なので是非ともオリジナル仕様で再発して欲しいと思います。
ゲイリー・ムーアと言えば「ワイルド・フロンティア」が名盤として誉れが高い。
ゲイリー・ムーアにしか作れない、アイリッシュ魂が結晶化した珠玉の名盤である事は間違いない。
しかし時代背景を考えた場合、この「炎の舞」が発表されたのは、本当にHM/HRの旋風が吹き荒れ始めた時代であり、「大いなる野望」そして来日公演でゲイリーの人気は日本で爆発!新作に対する注目度は最高潮だった!
今に例えると、ちょっと強引だが、ハロウィンの新作に対する期待に近いと言える。
そんな中に登場したアルバムだから特別な作品であり、時代のアイコンのような作品なのだ!
ゲイリー・ムーア、リッチー・ブラックモア、マイケル・シェンカー、ランディ・ローズ、エディ・ヴァン・ヘイレン、高崎 晃。
みんなが彼らに熱狂した時代。
あの時代の熱い音楽がたっぷり詰まったアルバムなのだ。
年寄り丸出しの話をしてしまった。
ドラムはイアン・ペイス!
〈VICTIMS OF THE FUTURE〉
side A
1)Victims Of The Future
アルペジオに神妙なギターのメロディー。何か不穏な空気が漂う。
Searching each day ~
破滅に向かう世界を愁い、ゲイリーは歌う。答えを探し苦悩する。その歌声は哀愁に満ちている。
バンドが力強く入り、へヴィーなミドルテンポでリフは刻まれる。
Caught in the fight~
先のメロディーの1オクターブ上でパワフルに歌うゲイリー!メタルの旋風に巻き込まれ、多少無理してでも高音域で歌ってしまった!その姿はゲイリー・バーデンにも通ずる。
Shadow of the past !
サビはEmに転調し、ハーモニーで飾る!キャッチーという程ではないが、説得力のあるフレーズだ!ギターの低音域のアレンジが効果的。
ギター・ソロがシリアスなオーラを放ちながら訴えかける!1音1音にとてつもない説得力があり、心に迫って来る!本当に凄い!
Victims of the future !
ゲイリーは吼える!力の限り!ギターも吼える!力の限り!
正座して聴くような曲ですね。
2)Teenage Idol
ノリノリのロックンロール!ギャップが凄い!
ゲイリーはガナリたてるように歌う!
ギター・ソロは燃え上がる!
日本オリジナル盤でB面だった2曲が立て続けに登場する。初めて聴く人は地味に聞こえないだろうか?
3)Shapes Of Things To Come
日本オリジナル盤で、トップを飾ったヤードバーズのカバー!やはりこれでしょう!何故か曲名に「To Come」が付け足されている。
エネルギッシュな短いイントロから、
Shapes !
明るく快活で、大きなウネリがある曲調がいい!ゲイリーの歌声も素晴らしい!
Come tomorrow !
雄大なコーラスとの掛け合いも興奮する!
ギター・ソロは見事に構築されていて本当に素晴らしい!この時代、ゲイリー、マイケル・シェンカー、ランディ・ローズ、高崎晃のプレイは構築が見事でドラマがあり、コピーして楽しかった!
そして少し退いたような感じになり、味わい深いフレーズがたのしめる。
Shapes!
最後はイントロのフレーズが繰り返され、ゲイリーは心ゆくまで絶叫する!ギャー!
このアルバムのリード・トラックでしょう。
名曲!
4)Empty Rooms
キーボードの美しいアルペジオに導かれ、この稀代の名バラードは始まる。キーはDm。
Loneliness is your only friend~
こういうバラードではゲイリーの歌声は絶品!ジョー・リン・ターナーやジョン・ウェットンにも負けない独自の味わいを出している。
You hope that she will~
ここでキーはFメジャーに。この悲しい曲の中で一瞬だけの安らぎの時。ゆえにやはり悲しい。
You see her face~
もう一度Verseが歌われる。情感たっぷりの歌声に心を奪われる。そして、
this time you’re wrong !
悲痛な叫びが夜にこだまする!聞かせどころとなっている。
Empty room !
ありがちなメロディーながら圧倒的説得力と感動をもたらすサビだ!心は熱くなる!
シンセのアルペジオをバックにアコースティック・ギターのソロが始まる。ただひたすらに悲しく美しい。
それをベースのソロが引き継ぐ。フレットレスの甘く優しい音だ。
シンセのアルペジオが前座の終わりと次の真打ち登場を表現するフレーズを奏でる!これがまた感動的!
真打ち登場!ゲイリーのギターが悲しい夜に叫びを上げる!もうゲイリーのもんですよ!この美しいメロディー、エモーション、ドラマ、そして泣き!出し惜しみする事なくたっぷりと聴かせてくれる!本当に素晴らしいソロです!
Empty room !
素晴らしいソロの後に登場するサビはまた格別!ゲイリーは言う。「自分で言うのも何だけど名曲だと思うよ」
最後のギターとヴォーカルの競演もまた一層感動を引き立てる!そして静かになり、シンセとギターが優しく幕を下ろす。
本当に名曲です。
side B
5)Murder In The Skies
大韓航空機をソ連が撃ち落とすという凄まじい事件があった!そのドキュメント・ソングである!ゲイリーがこの曲を作ったお陰で一生忘れない事件となった!サビにある通り、9月の朝の事だった!
ゲイリーは「ヒロシマ」、「ニュークリア・アタック」、「ヴィクティムズ・オブ・ザ・フューチャー」、「ミリタリー・マン」とか社会問題の曲をよく作る。立派な若者だ。アイルランドという国はそういう国なんだな。U2もいるし。
「The End Of The World」を思わせる激しいソロが炸裂!日本オリジナル盤にはなかったパートだ。そしてバンドを伴い16ビートで突き進む!へヴィーなリフもカッコいい!
そのリフの上にダブル・チョーキングを使ったギターの忌まわしいメロディーが、邪悪な空気を伝える!
Time was running out !
正統派ハード・ロックがカッコいい!やはりこういう曲を聴けるのが嬉しいですね。レインボー、マイケル・シェンカー、ヨーロッパ、洋楽ロックを聴く理由はここにある!
Murder in the Skies !
絵に描いたような完璧なサビではありませんか!メロディアスでキャッチー、ハーモニーもキマっている!Em~Gというコード進行を理想的に使いこなしたお手本です!
September morning !
ギター・ソロはやはり不気味な響きを放ち、力強いピッキング・ハーモニクスが攻撃的要素を表している!6連フレーズや吼えるチョーキングが緊迫感を伝える!素晴らしい!
Murder in the Skies !
最後はイントロのリフに乗せゲイリーが吼える!力の限り吼える!事件の非道さを伝えようと、とにかく吼える!
フェードアウトする中、ギターもひたすら吼える!
これぞハード・ロック!名曲!
曲順を入れ替えるなら、この曲をトップにするべきでは?
6)All I Want
日本オリジナル盤の「Devil In Her Heart」に代わって収録されたナンバー。
低音域のメロディー・リフがいい。
I don’t know what is~
明るいメロディーではあるが、明るい曲でもない。サビはいくらかキャッチーではある。
ギター・ソロはさすがのクオリティーです。
特にエンディングのソロはエキサイティングで聞き応えがある。
未発表曲、ボーナス・トラックを聴く感覚です。
7)Hold On To Love
日本オリジナル盤で堂々の2曲目に収録された哀愁のメロディアス・ロック!
イントロから哀愁のギターが炸裂!素晴らしいメロディー!
Look at you !
「Murder In The Skies」とは違い、キーボードも大きくフィーチャーされ、AOR的魅力のあるナンバーで、「Empty Room」と並び、最高のメロディーが聴ける!
You’ve got to realize~
途中で力を抜き、少し退いた感じで抑揚をつける。とても効果的でいかにもプロフェッショナルなアレンジです!
Hold on to love !
コチラのサビも完璧でコーラスもキマっていてキャッチー!超一流のクオリティー!みんなこの曲の事忘れてない?
ギター・ソロはイントロのメロディーを低音域から始めて、上に上がって行く構成。ポピュラー音楽を作るという考えとしては、やはり完璧なソロだと思います。やたら速弾きをして力を証明する必要がない巨匠のワザです。
You’ve got to realize~
そして
Hold on to love !
何度でも聴きたくなる素晴らしい曲です!
この曲をこんなに後ろに持ってきて…。マイケル・シェンカーの「Looking For Love」ですか?
8)The Law Of The Jungle
この曲はオジー・オズボーンが歌う予定だったが、日本の発売日に間に合わないのでゲイリーが歌った。英国盤はオジー・バージョンになると聞いていた気がするが、オジー・バージョンを聴いた事がない。本当に存在するのか?聴きたいんだけど。
ジャングルを思わせる鬱蒼とした雰囲気。これは確かにオジー向きの曲だ。
We step into the world~
ゲイリーの歌声はモロにオジーを意識している!曲調もそのものである!何故こんな曲を作ったのか?
The Law of the jungle !
間奏もオジーの曲そのもの!「Bark At The Moon」のアルバムの雰囲気。
ギター・ソロはゲイリー+ランディ・ローズですかね。
最後まで徹底的にオジー調が続く。
ゲイリーのキャリアとしてはかなり異質な取り組みでは?
〈炎の舞〉
side A
1)Shapes Of Things
曲名にTo Comeはつかない。
こんな映像があるのを初めて知りました。しかしギター・ソロが少し違っていて、しかも短い。
2)Hold On To Love
3)Murder In The Skies
冒頭の強力なギター・ソロはなく、いきなり始まる。
4)Empty Rooms
side B
5)Victims Of The Future
6)Teenage Idol
7)Devil In Her Heart
日本オリジナル盤に収録されたナンバー。アップテンポのハード・ロックで、現在はボーナス・トラックで聴ける。
8)Law Of The Jungle
曲名の頭にTheがついていない。
人気爆発のゲイリー・ムーア!JETレコードから「Dirty Fingers」と「Live At Marquee」が発売されるという問題が勃発!怒りのゲイリー!
GARY MOORE :Lead vocals and all guitars
Ian Paice:Drums
Neil Carter:Keyboads and backing vocals
Bass:Neil Murray, Mo Foster, Bob Daisley
そしてゲイリー・ムーアのご冥福をお祈り致します。
GARY MOORE / Victims Of The Future を語る。
ヴィクティムズ・オブ・ザ・フューチャー [ ゲイリー・ムーア ] 価格:1,885円 |
ハウ・ブルー・キャン・ユー・ゲット [ ゲイリー・ムーア ] 価格:2,640円 |
価格:1,980円 |
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トリスタン
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