第204話 フォルムラ・トレ/夢のまた夢 を語る

フォルムラ・トレ/夢のまた夢 1972年 発表。

イタリアの3人組ロック・バンド「フォルムラ・トレ」は3rdアルバムにおいて、本格的なプログレッシヴ・ロック・アルバムを発表した!

〈夢のまた夢〉

何とプログレ・ファンの心を捕らえるタイトルだろうか!直球ど真ん中である!

1stの「怒りの日」はタイトル曲こそプログレ感があって素晴らしいが、あとは普通のロック。2ndはアルバム全部普通のロック。

普通のロックが悪い訳ではない。「ニュートロルス」の初期の作品はみんな普通のロック。でも素晴らしい。

「フォルムラ・トレ」は曲がいまいちだったのだ。だがしかし!

〈夢のまた夢〉

これは桁違いの素晴らしさだ!まずトリオとは言っても編成が変わっている。ギター、キーボード、ドラム。その辺からして目指す音楽が普通ではないのが判る。

プログレとは言っても他のバンドとはかなり音楽性が違う。

夢の中を漂う様な、不安定で頼りない世界観を描写していて、何とも儚げで美しい!

決して完成度の高い音楽ではない。アイデアの断片が無造作に並んでいるだけに聞こえる部分もある。しかしそれら全てが「夢のまた夢」というコンセプトのもとに見事に輝きを放っている!

これも才能のなせる技か?つまりプログレに決まりはないのだ。感性が結晶化して美を生み出すのだ。う~む。

イタリアはやはり奥が深い。

〈sognando e risognando〉

1)夢のまた夢/Sognando e Risognando

立ち止まった幻影/fermo al semafaro

アルベルト・ラディウスのギターのカッティング(?)の音が聞こえて来る。亡霊の歩みの様に妖しげだ。同じパターンをひたすら繰り返し、繰り返し…。

トニー・チッコのシンバルは物語の目覚めを促す。

ガブリエーレ・ロレンツィのストリングス・シンセサイザーが悲劇的美しさで湧き上がる。

そして低音のシンセサイザーが地を揺るがしテーマを奏でると、高音シンセ・リードが夢想空間の天を翔け巡る!何と言うドラマチックさだ!

さらにギターはテクニックもへったくれも関係ない唯我独尊の様なリードを展開!もはや圧巻である!

アルベルト・ラディウスのギターは本当に特徴的で、イタリアン・ロックの影を背負った妙薬の様な味がある!

このオープニング曲一発で私の心は持っていかれた!凄い!

夢/sognando

低音シンセが不穏なメロディーを奏で、ドラム、オルガンも加わり曲は進む。ギターは低音を中心に不気味なバッキングで参戦する。

オオオオオオオ!オオオオオオオ!

男声のコーラスが次のパートのメイン・テーマを歌う!とてつもない非現実感がある。

不穏なメロディーは増殖してゆき、バンド・アンサンブルは奇怪なメロディーと戯れる!

彼等が描き出す夢は何ともイビツだ!

夢からさめて/la stalla con i buoi

~la stalla con i buoi~

トニー・チッコの美しい歌声が響く。メロディーも美しい。アコースティック・ギターのアルペジオも美しい。

バラード調で始まるが、ラディウスのギターの低音メロディーに導かれハードな展開となる!

「夢からさめて」という事で、現実世界を歌っていると思うが、歌詞は意味不明である。

スリリングなドラムが打ち鳴らされ、ギター・ソロが鳥の鳴き声の如く響き渡る。

イタリアン・ロック屈指の名曲だと思います。

再び夢みて/risognando

ギターが途方にくれた様に意味不明のメロディーを奏で、カウベル(?)の様な音がリズムを刻む。

再び見る夢はもはや脱け殻なのか?

2)朽ちゆく、一片の葉/Una Foglia

樹木/l’albero

オルガンとドラムが何かを伝えようとしている。とても深刻だ。緊張感が走る。

ギターが加わり、哀愁の旋律が情景を映し出す!

テテテテ~

というフレーズがとても印象的で素晴らしい!そしてギターの音色もナチュラルで美しい!

印象派の様な音楽だ。

スリリングで渦を巻く様なオルガンが参入!事態は急を告げる?即興的なプレイが続き、息を飲む様な展開だ!

希望の灯も絶え/non mi ritrovo

ドラムがひとりリズムを刻む。バリエーションを見せるとバンドは再び不可思議なアンサンブルを展開!プログレだ!

オルガン・ソロがウネリを上げ、ギターはフリーなソロに突入する!

徐々にアンサンブルの緊張感が高まって行く!

終章/finale

CD再発リマスターに伴い、間髪入れず始まる!

ピアノが感動的に打ち鳴らされ、

テテテテ~のメロディーがアコースティック・ギターで奏でられる!荘厳なアレンジによって感動が押し寄せる!

ストリングス・シンセサイザーがシンフォニックに響き渡り、圧倒的な美しさで終幕を迎える!

研ぎ澄まされた感性による音楽で、他の誰とも似ていない本当にオリジナリティのある世界が味わえる!

3)男と女のお話/Storia Di Un Uomo E Di Una Donna

本当に素晴らしいアルバムだが、この曲だけ違和感がある。(個人的感想)

フォークだかブルースだか知らないが、アルバムのコンセプトに合わないと思う。

ラディウスの歌声は悪くない。

4)永遠/Aeternum

テーマ/tema

颯爽とした重厚なテーマ・メロディーをバンドが一丸となってへヴィーにプレイする!とてもプログレしている。

~Non pensare, non pensare~

トニー・チッコの美しい歌声が登場する!叙情的なメロディーで、「夢からさめて」と対をなす感じだ。コード進行も感動的。

再びテーマ・メロディーが重厚なサウンドでプレイされる。

狩り/caccia

シンセサイザーがファンファーレ風に高らかに鳴り、それは美しいメロディーへと変化して行く。先程のチッコが歌ったテーマのバリエーションの様な形だ。

とても美しい。

間奏曲/interludio

ガブリエーレ・ロレンツィによるピアノ・ソロ。非常に芸術的でハイレベル!PFMのフラヴィオ・プレモリに匹敵するクオリティー!

バンドが加わり、爽やかな雰囲気に。ギターはモジュレーションか何かが掛かっていて、クシュクシュした音で、3音が上昇するフレーズを左右で掛け合いする。

シンセサイザーが不穏な響きを発し、緊張感。

再び重厚なテーマ・メロディー登場。

ドラムとキーボードがリズムを合わせて打ち鳴らす。チッコが歌ったテーマのバリエーションが再び登場。ドラムが感動的に演出している!

ピアノが桜吹雪の様に舞い散る。

終章/finale

チッコが歌ったテーマのコード進行をストリングス・シンセサイザーが淋しげに奏で、幕が降りる。

構成が良く練られていて、とても見事な組曲になっている!素晴らしい!

皆さんご存知だと思いますが念のため書きますと、sognandoはソニャンドと読みます。あ、知ってましたか?すいません。

次の「神秘なる館」は名盤らしいのですが、私は好きではありません。この「夢のまた夢」こそが名盤です。

〈FORMULA 3〉

Tony Cicco

batteria, percussioni, voce

Gabriele Lorenzi

organo hammond, pianoforte, minimoog, basso, busilacchio, archi elettronici, voce

Alberto Radius

chitarra elettrica, basso, chitarra acustica, voce

FORMULA 3/sognando e risognando を語る。

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お越し頂き、ありがとうございました。また お逢い致しましょう。

トリスタン

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