第179話 カーヴド・エア/Second Album を語る

カーヴド・エア/セカンド・アルバム 1971年 発表。

名作「エア・コンディショニング」に続く作品は、メンバーの音楽的志向の違いが問題となった状況で作られた名作。

ダリル・ウェイ(vln)とフランシス・モンクマン(g,key)の音楽的志向の違いが顕著となり、何とアルバムのA面B面に作品が別れるという事態になった。

バンド継続のために理性的な判断を下したのはさすがに知性的な人間の集まりだと思う。次のアルバムまでしかもたなかったけど。

しかしそんな事ではこのアルバムの素晴らしさは少しも揺るがない。本当に素晴らしい作品である!

前にも書いたが、カーヴド・エアの音楽からは、フランスの香りがする。優雅な曲調、メロディー、コード進行、ヴァイオリンの調べ、どれをとっても英国のそれとは違う。

かといってフランスのどのバンドに似ているかと言えば、私の知る限りどれとも似ていない。

つまりフランスのバンドは、私がイメージするフランスの香りをあまり放っていない。それを放っているのは何故か英国のカーヴド・エアだったという話になる。

そしてその音楽の多彩さにも驚く。ロックやポップスだけでなく、他のジャンルの音楽を巧みに吸収し、自分たちの音楽に仕上げて完成させてしまっているのは見事である!さながらクイーンの様だ!

ソーニャ・クリスティーナの官能的で美しいヴォーカルも忘れてはいけない(忘れるヤツはいない)。この歌声あってのカーヴド・エアである!

キャッチーでポップで多彩で優雅でプログレッシブなこのアルバムは、永遠に私の心を捕らえ続けるだろう。

〈SECOND ALBUM〉

side A(Way side)

1)Young Mother

モーグ・シンセの音が聞こえてくる。非常に屈折したメロディーだ。そしてバンドが加わる。ツカミは抜群だ。

ソーニャ・クリスティーナのヴォーカルが入るとそこはファンタジーの世界。この摩訶不思議なコード進行とメロディー、曲調は他にはない。

ヴァイオリンは優雅に、変わったメロディーを奏でる。

そしてシンセ・ソロ。ウキウキする様なメロディーだ。快活でいい。コード進行はシンプル。そしてイントロのフレーズに。

再びソーニャのヴォーカル。マイナーとメジャーが入り交じった本当に不思議なメロディーで、普通はこんな曲を作るヤツはいない。

カーヴド・エアでしか味わえない、オリジナリティの塊の様な名曲!

2)Back Street Luv

ハードなイントロ!キーボードがクセのあるリフを奏で、その上にソーニャ・クリスティーナのヴォーカルが乗る。マイナー調だ。

するとガラリと変わって突き抜けたような、明るくチャーミングな曲調に早変わり!このインパクトは絶大!凄いセンスだ!

もう一度繰り返し、マイナーで引っ張る。

そのまま繰り返し、曲は終わる。

何ともキャッチーで、やはり変わったセンスを持っている!これは結構ヤミツキになる!

素晴らしい!

3)Jumbo

優雅で幻想的なバラード。本当に美しい曲だ。

しつこい様だが、このコード進行、メロディー、何処からこんなアイデアが生まれるのか?そして本当にフランスの香りがする。

そしてソーニャ・クリスティーナの夢の様な歌声が美しい。

4)You Know

サイケデリックな雰囲気がまたいい味を出している。歌のバックのメロディー(リフ)もいい。

サビはいかにも!というメロディーではなく、サラリと流しているのも特徴。

ギターが独特の音色で官能的!

5)Puppets

変なSEからリズムを刻む音。ピアノとヴォーカルが入る、何とメロトロンまで!そしてまたまた不思議なメロディー!

ここまでの曲を聞いてきて思うが、私には絶対作れない曲調、メロディーばかりだ…。

たんたんと曲は進み、終わって行く。

side B(Monkman side)

6)Everdance

これまた不思議なメロディーだ!さらに拍車がかかっている気がする!ドラムも手数の多いリズムでキまっている!

曲は短くすぐ終わる。

7)Bright Summer’s Day ’68

クイーンがやりそうな芝居がかった曲で、幅広い作曲センスに脱帽する!

ギター・ソロも冴えている!

この曲も短くすぐ終わる。

8)Peace Of Mind

カーヴド・エアの曲で最も長い作品。ガラリと変わって妖しく重く始まる。

ヴォーカルもただならぬ深刻さを表すシリアスなメロディーだ。

ソーニャ・クリスティーナの歌声はやはりフランスの音楽を感じさせる。

ピアノとストリングスが格調高く物語を表現する。

突如チェンバロが入る!そして再びソーニャの歌声。

ヴァイオリンが控え目に奏でられ、ピアノの調べが舞う。この辺りはルネッサンスっぽい。

そしてソーニャの語り、そして再び歌声。

キャッチーさは微塵もない!まさにプログレ!

そしてシンセ・ソロへ!ジェネシスの「シネマ・ショー」っぽくていい。

そしてスローな、たゆたうような雰囲気に変わる。徐々に小さくなり、消えて行く。

はじめは取っ付きにくいが、慣れると本当に素晴らしい芸術作品だと実感する!

プログレッシブ・ロックの歴史の中で、大きく名盤として、語られている気がしないが、これはとんでもない名盤である!

残念ながら私はカーヴド・エアとの出会いが遅かったので、歴史を共に出来なかったが、残った余生でその遺産を楽しみきって行きたい。

〈CURVED AIR〉

Sonja Kristina:Vocals

Darryl Way:Violin

Francis Monkman:Guitar, Keyboads

Ian Eyre:Bass

Florian Pilkington-Miksa:Drums

CURVED AIR / Second Albumを語る。

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トリスタン

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