第176話 イングヴェイ・マルムスティーン/オデッセイ を語る

イングヴェイ・マルムスティーンズ・ライジング・フォース/オデッセイ 1988年 発表。

マーク・ボールズは残念ながら脱退してしまったが、後任は何とジョー・リン・ターナー!渾身の名作が生まれた!

驚いた!まさかジョー・リン・ターナーとは!

そして、ハイトーン指向のイングヴェイの音楽には合わないのではないか?とも思った。

しかし出来上がった作品は、クラシカルさとポップさが見事に融合した素晴らしいモノだった!

そして何より、このアルバムの制作前に、イングヴェイは自動車事故で死にそうになった!

幸い命はとりとめたが、ギターが以前の様に弾けなくなってしまった!しかしイングヴェイは必死で練習しまくり、再びあの華麗なプレイを取り戻した!凄いぞ!(少し粗くなったとも言われている)

ジョー・リン・ターナーのヴォーカルによってポップさとエモーションが加わり、イングヴェイの音楽は新たな生命を得た。

イングヴェイの歴史を俯瞰して見ると、最もイングヴェイに相応しい、と言うか合っているヴォーカルは間違いなくマーク・ボールズだと思う。

しかしジョー・リン・ターナーは間違いなくハード・ロック史上最高峰のヴォーカリストの一人であり、彼にしか出せない味わいがある。

この「オデッセイ」は最高傑作の一枚であり、そういう意味ではアルカトラスと並ぶ作品とも言える。

当時のインタビューを読むと、このアルバムを作るのにジョーは相当苦労したらしい。イングヴェイと言う天才と意見がぶつかれば、かなり大変なのは想像に難くない。ただの雇われヴォーカリストの方が楽だろう。

そして名義に小さくライジング・フォースが加えられているのが面白い。その辺に哀愁が滲み出ている。

しかしジョーのヴォーカルは素晴らしい!イングヴェイ・マルムスティーンの音楽をジョー・リン・ターナーの音楽にしてしまうパワーがある。そういう意味ではこのアルバムは異端なのかも知れない。

〈Odyssey〉

side A

1)Rising Force

荘厳なキーボードに続き、強烈なリズムが加わる!これはカッコいい!シビれる!その後登場するメインリフは意外にも極めてオーソドックスなハード・ロックのリフ!これはどうした事かと思った!

そしてジョー・リン・ターナーの登場!火花が散る様な強烈な歌声だ!最初のメロディーがメイデンの「Aces High」に似ている。

サビはイングヴェイらしい美しいメロディーだ。ジョーの歌声は鬼気迫るモノがある。

ギター・ソロの最初、また意外にも簡単なコード進行に、ヒネリを感じない高速アルペジオ!イングヴェイに何があった?(事故があったけど)。オクターブで移動するあたり、難し過ぎる!絶対弾けない!

エンディングのキーボードとのユニゾンは見事!凄まじいフレーズだ!

意外性があったものの、イングヴェイを代表する名曲となった!

2)Hold On

ジョー・リン・ターナーの独壇場とも言える哀愁のバラード系ナンバー!レインボーの「Bent Out Of Shape」路線の曲で、本当に素晴らしい!

ギター・ソロの音にイコライザーがかかっていて、キラキラ輝いている!

キーが高めに設定されているので、ライヴでは歌わなかったのだろう。

心をわしづかみにする名曲。

3)Heaven Tonight

ここまでポップな曲を作るとは思わなかった!衝撃だ!

しかし慣れるといい曲だ。ライヴでもいい効果を出している。

4)Dreaming(Tell Me)

イングヴェイの美意識が結晶化したバラード。ジョーのヴォーカルでとんでもない名曲となったが、

Dreaming !

と言うサビの歌い回しは、ライヴの方が滑らかで感動的になっている。その分このスタジオ・バージョンが聞き劣りするのが残念。

5)Bite The Bullet

3連系のリズムで突き進むインスト。次の曲のイントロの様な役割になっている。

途中からキーボードをバックにギターが弾きまくり。

6)Riot In The Dungeons

再び3連系のリズムで突き進む。イングヴェイらしいクラシカルでダークな曲!

さすがにこの曲はジョーの音楽にならずイングヴェイの世界である。

side B

7)Deja Vu

再びジョー・リン・ターナーの魅力が爆発するキャッチーなナンバー。美しいコード進行を活かしたメロディーが素晴らしい!

イングヴェイとジョーのケミストリーの素晴らしさが証明された名曲。

8)Crystal Ball

イントロの神秘的な雰囲気がいい。ギターはやはり美しい。ライヴではロングバージョンでさらに素晴らしい。

この曲も神秘的で美しいコード進行を活かしたメロディーが素晴らしい!それを歌うジョーのヴォーカルは本当に魅力的だ!

いい曲過ぎる!

9)Now Is The Time

イントロがクラシカルで荘厳だが、ボン・ジョヴィっぽい曲だ。

Now is the timeと言う歌詞はイングヴェイの曲としては少々安っぽい。

10)Faster than the Speed of Light

アップテンポで疾走する曲。イングヴェイらしい音楽だが、ジョーのヴォーカルはこの曲を通常のメロディアス・ハードにはしていない。

11)Krakatau

スリリングでテクニカルなインストかと思ったら。途中からへヴィーな作風に展開する。スラッシュ・メタルの影響を感じた。

12)Memories

アコースティック・ギターのアルペジオ主体の美しいインスト。ジェネシスを感じる。

イングヴェイを心から応援していた亡き母に捧げる曲だったと思う。

やはり長くは続かなかった。ライヴ・アルバムを遺してジョーは去った。ヨハンソン兄弟もいなくなった。

そして次のアルバムは北欧の美が結晶化した作品となった。

〈Yngwie J. Malmsteen’s Rising Force〉

Yngwie J. Malmsteen:Guitars&Bass

Joe Lynn Turner:Vocals

Jens Johansson:Keyboards

Anders Johansson:Drums

Yngwie J. Malmsteen’s Rising Force / Odyssey を語る。

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お越し頂き、ありがとうございました。また お逢い致しましょう。

トリスタン

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